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「白鳥の湖」グルジア国立バレエ(2007.07.21)

クレジット

音楽:P.I.チャイコフスキー/振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ/演出・台本改訂・振付改訂:アレクセイ・ファジェーチェフ/ファジェーチェフ補佐:タチヤーナ・ラストルグーエワ、ドミトリー・コルネーエフ/衣装・装置:ヴャチェスラフ・オクネフ/照明:ポール・ヴィダー・セーヴァラング
指揮:ザーザ・カルマヘリーゼ/演奏:東京ニューシティ管弦楽団
東京文化会館

キャスト

オデット/オディール:ニーナ・アナニアシヴィリ
プリンシパル・ダンサー/ジークフリート王子:アンドレイ・ウヴァーロフ
芸術監督/悪魔:イラクリ・バフターゼ
王妃:テオーナ・チャルクヴィアーニ
式典長:ユーリー・ソローキン
パ・ド・トロワ:アンナ・ムラデーリ、ニーノ・ゴグア、ラシャ・ホザシヴィリ
3羽の白鳥:アンナ・ムラデーリ、ニーノ・ゴグア、ショレナ・ハインドラーワ
4羽の白鳥:マリアム・アレクシーゼ、ツィシア・チョロカシヴィリ、ニーノ・マグラーゼ
花嫁候補:ナティア・ブントゥーリ、ニーノ・サナーゼ、エカテリーナ・シャヴリアシヴィリ、リーリ・ラバーゼ、ルスダン・クヴィツィアーニ
ナポリの踊り:ニーノ・マハシヴィリ、アルトゥール・イワノーフ
ハンガリーの踊り:アリーサ・ボグダーノワ、エフゲニー・ゲラシメンコ
スペインの踊り:マイヤ・イリュリーゼ、タマーラ・チェリーゼ、ダヴィッド・ホザシヴィリ、ワシル・アフメテリ
ポーランドの踊り(マズルカ):イナ・アズマイパラシヴィリ、ソフィコ・ファンツライア、ヴェーラ・キカビーゼ、ナターリア・リグヴァーワ、アルチル・クヴィツィナーゼ、パーヴェル・イワーノフ、ゲーラ・ペズアシヴィリ、オタル・エラシヴィリ

感想

グルジア・バレエの「白鳥の湖」は、2004年のニーナ・ガラで披露されたファジェーチェフのダイジェスト版をベースにした作品。なので、1幕はバレエスタジオでのレッスン。芸術監督に虐げられて落ち込んだプリンシパルダンサーの夢が2幕以降、という物語。知っていれば何て事はないのですが、知らずに見ると最後の夢オチは微妙な感じがするでしょうか。

私は某お気に入りダンサーYさんがクラシックダンサーとして進化した理由がファジェーチェフの指導にあると信じているので、彼のこの改訂をあまり悪く言いたくはないのです。結局ね、予算とか教育的な部分とかでカンパニーの地力に合わせた改訂だったんだろうなと見えてしまった為に、夢の世界にどっぷり浸かることが出来なかった事が残念ではありました。通常版の1幕よりはバレエスタジオの方がお金はかからないし、様々な振付の改訂も、踊る事によってダンサーの実力が上がるような振付になっているのかなーと思って見てしまったんですよね。そういう意味では、ヌレエフのドキュメンタリーなんかを見ると彼の振付は(自分自身が多忙なため)舞台で踊る事がすなわちレッスンになるような振付になっているそうで、それを思い出しもしました。

衣装や装置はオクネフさん(マールイとか、新国の以前の版で美術担当された方)なので見慣れた感じでよかったのですが、白鳥チュチュのチュールの分量が少なくてちょっと淋しかった部分はありました。ニーナのチュチュは他の人より一回り大きいとかで、彼女が出てくると他の人の衣装が余計に淋しく見えたというのもあると思うんですけど。

でもダンサーたちの水準は想像以上!ほっそりとしてプロポーションがよいし、みんな美人さん/ハンサムさん。特にパ・ド・トロワの男性ラシャ・ホザシヴィリは目をひきましたねー。もっと見たかったです。トロワの女性2人を始め、このカンパニーはポワントの音をさせないダンサーもかなり多くて、その点もかなり好印象を持ちました。3羽の白鳥に入っていた一際背が高くて目を惹く女性、ショレナ・ハインドラーワもまた見てみたいダンサーの一人。

ウヴァーロフが1幕で登場した時は本当に本当に嬉しくて泣きそうでした。彼自身が怪我でしばらく日本に来れなかったし、先日の新国立「ドンキ」にゲスト出演した際は私が見られなかったので、本当に久しぶりのウヴァーロフだったの。カンパニーのダンサーたちとも馴染んでいるようで違和感がなかったし、怪我も本当によくなったんだなーと嬉しくなる程に快調。

そして2幕。ニーナが登場した時には更に泣きそうに。正直、オデットは少々安定感に欠けたというかキープがちょっと弱くなっていたようで一抹の淋しさを感じたのですが、オディールが凄かった。彼女がオディールとして登場した時に、この日の公演はブースターのスイッチがカチっと入った感じ。押し出しの強さ、華やかさ、自在に空間を支配する存在感、ニーナのオデットは悪ではないんだよね。もしかしたら王子の心の中にある、ある意味理想の女性のような。そんなニーナの踊りを見て、震えるほどの幸せに包まれました。

ファジェーチェフ版ではスペインはロットバルトの手先として登場します。その場合、スパニッシュを踊るダンサーには"悪の手先"としての存在感や押しの強さが必要とされますが、その点もバッチリ。このカンパニー、スパニッシュ系を得意とするダンサーがいるのが大きな強みですね。マイヤ・イリュイーゼの背中の柔らかさと腕遣いのしなやかさは特筆ものですが、他の3人もスペシャリストと言っていいのでは。完成度の高い、本当に見事なスペインでした。それに比べると他のディヴェルティスマンは少々つたなさを残していますが、その辺は経験を積んで自覚が出てくると変わってくるでしょうねぇ。白鳥のコール・ドにしても、まだこれからの伸びしろの方がずっと大きそうな感じがします。

たとえば曲が始まったのに幕の向こうから話し声が聞こえるとか、カーテンコールで幕があいた時にダンサーが動いてたとか、海外のカンパニーに時々見られる"緩さ"があって、それがカンパニーの格を少々下げているのかな、とは思いました。でも提供してくれるパフォーマンスは予想以上に素晴らしいものでしたので、その辺の意識がカンパニーの隅々まで浸透すればとてもよいカンパニーになるだろうな、と思います。

芸術監督であるニーナの暖かな愛情で育まれているカンパニー、応援したいなという気持ちが芽生えました。国の情勢を思うと状況は厳しいと思いますし経済的にも思うに任せないだろうと思いますが、また近いうちに来日してダンサーたちの成長を見せていただきたいものです。

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