- 2007/07/17 18:36|
- Category: オーストラリア・バレエ|
クレジット
振付:マリウス・プティパ、スタントン・ウェルチ/音楽:P.I.チャイコフスキー/装置・衣装:クリスティアン・フレドリクソン/装置・衣装協力:フィオナ・レイリー/照明:ジョン・レイメント
指揮:ニコレット・フレイヨン/演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
東京文化会館
キャスト
オーロラ:ルシンダ・ダン
フロリムント王子:マシュー・ローレンス
フロレスタン王子:ケヴィン・ジャクソン
王:フランク・レオ
女王:キスメット・ボーン
カタラブット(式典長):コリン・ピアズレー
宮廷の看護婦:ソフィー・フレッチャー
看護婦:カミラ・ヴァーゴティス、ジュリエット・バーネット、ナタリー・ヒル、ジーナ・ブレシャニーニ
リラの精:ダニエル・ロウ
カナリヤの精:マドレーヌ・イーストー
地の精:久保田美和子
空気の精:ラナ・ジョーンズ
水の精:アンバー・スコット
火の精:ゲイリーン・カンマーフィールド
リラの精の騎士:アダム・ブル、ポール・ノブロック
青い鳥:レミ・ヴェルトマイヤー
二人のイワン:ダニエル・ゴーディエロ、ツゥ・チャオ・チョウ
ジンジャー・キャット:ベン・デイヴィス
白い猫:ナターシャ・クセン
人形:ジェシカ・トンプソン、ブルック・ロケット、本坊怜子、ダナ・スティーヴンセン
彫像:ルーク・インガム、ティモシー・ファラー、ゲンナーディ・クーチン、ジョン=ポール・イダシャク
カラボス:オリヴィア・ベル
四人の冬の精:ロビン・ヘンドリックス、ジェーン・カッソン、ステファニー・ウィリアムス、フランシス・マーフィー
フクロウ:シモーヌ・プルガ
カラボスの騎士:藤野暢央、マシュー・ドネリー
四人の王子:トリスタン・メッセージ、アダム・スーロウ、ルーク・インガム、アンドリュー・キリアン
オーロラの友人:カミラ・ヴァーゴティス、ジュリエット・バーネット、ナタリー・ヒル、ジーナ・ブレシャニーニ
男爵夫人:ジェーン・カッソン
トピアリ−、廷臣、妖精、衛兵、侯爵夫人、女中、トロール、子鬼:オーストラリア・バレエ団
協力:東京バレエ学校
感想
スタントン・ウェルチのこのプロダクションは、リラの精が春の女王/カラボスが冬の女王という設定で、妖精たちの思惑や諍いと人間の営みに大きな影響を与えるものの、オーロラ姫に課せられた運命については人間たちは知らないままに月日が過ぎる、というもの。面白い設定ではあると思うのですが、春夏秋冬の移ろいを愛する私としては、"なんで春が善で冬が悪なのか、決められた通りに四季が移ろうのが何で悪いのか"と最初の設定自体がどうにも腑に落ちず(でもって"そんなことはどうでもいいか"と思えるだけの求心力を作品に感じられなかったので)、入り込めないまま見終わった感じです。
だって、リラの精が"いつもより春の訪れを早めることにした"から冬の精カラボスが怒ってしまった訳で、「リラの精が"いつもより早めた"のがいけないんじゃん」と考えちゃったんですよね。冬しか知らない王子たちもそれなりに幸せそうではあったし、妖精の諍いに人間が巻き込まれて、ついでに時を越えたロマンスも生み出しちゃったって感じかなぁ。おとぎ話を更に読み替えたものに対して文句をつけても、と言えばそれまでなんですが(笑)。
衣装や装置は本当に豪華でした。好きかと聞かれれば、「そんなに...」という感じではあったのですが、オーストラリア・バレエの意気込みを感じる作品であったのは間違いありません。特に動物系はかわいくて、カラボス軍団の大きなフクロウ(ラブリー!)やネズミたち、オーロラ誕生の贈り物であった白い猫とジンジャー・キャットたちの衣装の素材感は最高。チュチュ好きとしては、その豪華さがチュチュの方面へ来なかったのがちょっと残念なんでしょうね。オーロラだけがチュチュ姿でしたが、ディテールはとてもキュートなのに舞台で見ると地味に見えたのも残念でした。ここのバレエ団、みんなチュチュが似合いそうなのに、どうしてみんなで着てくれなかったのかなぁ、残念だわ。
振付はところどころプティパを生かしたもので、元々レジデント・コレオグラファーであったウェルチですからカンパニーの良さを生かした振付にしていたのだろうと思います。4人の王子たちは踊る場面が増えていていましたしね。でももう、いっそのこと"白鳥"みたいに話も振付も作り替えちゃってもよかったんじゃないかなぁとも思いました。細かいところではけっこう気に入った部分も多いので、酷評するつもりはありませんが、まぁ結局私は、最初の設定に乗り切れなかったってことなんでしょうね。勿体なかったなぁ、と今になって思いますけれど。
よいなーと思ったのは、リラの精と仲間の精たちが1幕だけでなく3幕も踊ること。同様にカナリアと青い鳥をペアにして1幕と3幕に一緒に登場させたこと、そして猫たちも1幕と3幕両方に出てくること。登場時間が長い分キャラクターも判りやすいし、オーロラの眠りがさめて春が来たことで、春の世界の住人たちが踊るという点でつじつまが合うようにも感じました。カナリアの精が3幕でヴァリを踊った時に、ジンジャー・キャットがつい本能に負けてカナリアを獲ろうと爪をふるったのは可愛かったですものね〜。
あと、カラボス一味の結束が固かった事もかなり気に入りました。フロリムントたちがオーロラ救出に来た時に闘って負傷した自分の騎士のこと、カラボスは本気で心配して嘆いていたでしょう?このプロダクションにはそういう細かいドラマがそこかしこにちりばめられているのが魅力なのかな、と思ったりしました。
オーロラが勝ち気な女性という設定も目をひきましたよね。綺麗な薔薇に目がなくて、初めて見た珍しい黒いバラが欲しくて仕方がない。知らんぷりするカラボスから黒バラをひったくって、あげくの果てに棘に刺されてカラボスを平手打ち。見た事のないキャラクターは新鮮ではありました。そういう女性が100年の眠りを経て大人に成熟したのであれば、その眠りも意味ある事だったのかな?と思えなくはありませんね(笑)。
ダンサーでは、やはりルシンダ・ダンが際立っていました。ローズアダージオの圧倒的なバランス、カンパニーのプリマバレリーナとしての特別な存在感、本当に素晴らしくて大好きになりました。世界バレエフェスで見た時から好感を持っていたのですが、全幕で観るとその美質が際立つのね。マシュー・ローレンスも全幕で観る方が説得力が増すダンサー。特にこのプロダクションのフロリムントは彼によく似合っているような気がします。
あとはカナリアの精役のマドレーヌ・イーストー。「白鳥」のオデットで見たので目が彼女の踊りに慣れたという事もあると思いますし、カナリアにぴったりのアレグロタイプなので目に心地よいのですよね。そして、カラボス役のオリヴィア・ベル。彼女は色香と強靭さを持つ存在感のあるダンサーですね。彼女の男爵夫人見たかった、とこのカラボスを見て思いました。割とさっぱりしたタイプが多いこのカンパニーにあって、彼女の存在はとても目を惹きます。キャラ的にはメインロールよりミルタとかガムザッティとかのタイプだと思うけど、彼女みたいなダンサーがいると作品が引き締まります。それと、この版独特のキャラ、フロレスタン王子役のケヴィン・ジャクソンは美味しい役でしたね。次男坊キャラにぴったり。
作品の世界には入り込めぬまま終わってしまったような気がしますが、カンパニーの事はとても気に入りました。もっといろんな作品を見てみたい(特に、新版「ライモンダ」!)。コンテやチュチュ・プロジェクトを含めてとても意欲的なカンパニーなので、次回は11年なんて空けずに色々もって来てくれたらいいなーと思います。
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