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「バッハへのオマージュ」スペイン国立ダンス・カンパニー(2007.02.03)

クレジット

芸術監督:ナチョ・ドゥアト
振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ(コラージュ)/装置:ジャファル・アル・チャラビ(構想 ナチョ・ドゥアト)/衣装:ナチョ・ドゥアト(協力 イスマエル・アズナール)/照明デザイン:ブラッド・フィールズ)
神奈川県民ホール 大ホール

第1部 マルティプリシティ(Multiplicity)

プロローグ:ゴルドベルク変奏曲 BWV988

(グレン・グールド:ピアノ)
ナチョ・ドゥアト、アレハンドロ・アルヴァレス

1. 世俗カンタータ「墓を裂け、破れ、砕け」BWV205

(ウィーン・コンツェルトゥス・ムジクス/ニコラウス・アーノンクール指揮)
アレハンドロ・アルヴァレス、ホセ・カルロス・ブランコ、スウィー・ブーン・キュイク、ディモ・キリロフ、ジェンティアン・ドゥダ、ファブリス・エデルマン、ジョエル・トレド、アマウリー・レブルン、イサック・モントロール、リウ・バロッキ、アナ・テレサ・ゴンザガ、秋山珠子、マリナ・ヒメネス、ルシア・バルバディーリョ、ヨランダ・マルティン、スサナ・リアスエロ、アナ・マリア・ロペス、ステファニー・ダルフォンド、ルイサ・マリア・アリアス

2. 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調

(アンナー・ビルスマ:チェロ)
アレハンドロ・アルヴァレス、イネス・ペレイラ

3. 音楽の捧げもの

(ダヴィッド・モロネイ:チェンバロ、マーサ・クック:チェンバロ)
スサナ・リアスエロ、アマウリー・レブルン

4. 管弦楽組曲第2番 ロ短調

(バルトルド・クイケン:フルート、ラ・プティット・バンド/シギスヴァルド・クイケン指揮)
ディモ・キリロフ、ホセ・カルロス・ブランコ、アレハンドロ・アルヴァレス

5. 音楽の捧げもの

(ダヴィッド・モロネイ:チェンバロ、ジョン・ホロウェイ:フルート)
リウ・バロッキ、アナ・テレサ・ゴンザガ

6. ブランデンブルグ協奏曲

(ムジカ・アンティクヮ・ケルン/ラインハルト・ゲーベル指揮)
アマウリー・レブルン、ホセ・カルロス・ブランコ、ファブリス・エデルマン、ディモ・キリロフ、ジェンティアン・ドゥダ、ルシア・バルバディーリョ、ルイサ・マリア・アリアス、マリナ・ヒメネス、スサナ・リアスエロ、イネス・ペレイラ

7. ヴァイオリン・ソナタ ホ短調

(エリザベス・ウォールフィッシュ:ヴァイオリン、ポール・ニコルソン:チェンバロ、リチャード・タンニクリフ:チェロ)
ヨランダ・マルティン、ジョエル・トレド、秋山珠子

8. 4台のチェンバロのための協奏曲 イ短調

アナ・マリア・ロペス、ルシア・バルバディーリョ、ルイサ・マリア・アリアス、アナ・テレサ・ゴンザガ、リウ・バロッキ、ステファニー・ダルフォンド

9. ヴァイオリン協奏曲 ト短調

(アリス・アーノンクール:ヴァイオリン、ウィーン・コンチェルトゥス・ムジクス/ニコラウス・アーノンクール指揮)
アレハンドロ・アルヴァレス、ヨランダ・マルティン

10. 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調

(アンドリュー・マンゼ:ヴァイオリン、レイチェル・ボッジャー:ヴァイオリン、ジ・アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック/アンドリュー・マンゼ指揮)
アマウリー・レブルン、ディモ・キリロフ、スウィー・ブーン・キュイク、ジェンティアン・ドゥダ、ホセ・カルロス・ブランコ、ファブリス・エデルマン

11. メヌエット ト短調

(グスタフ・レオンハルト:チェンバロ)
アレハンドロ・アルヴァレス、イネス・ペレイラ、マリナ・ヒメネス、スサナ・リアスエロ、ホセ・カルロス・ブランコ、ジェンティアン・ドゥダ、ディモ・キリロフ、ジョエル・トレド、イサック・モントロール

12. 世俗カンタータ「消え去れ、悲しみの影よ」

(リサ・ラッソン:ソプラノ、アムステルダム・バロック・オーケストラ、合唱団/トン・コープマン指揮)
アレハンドロ・アルヴァレス、ヨランダ・マルティン

13.ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第5番 ヘ短調

(ハイメ・レラード:ヴァイオリン、グレン・グールド:ピアノ)
ホセ・カルロス・ブランコ、ジェンティアン・ドゥダ、ディモ・キリロフ、アマウリー・レブルン、イサック・モントロール、スウィー・ブーン・キュイク、ファブリス・エデルマン、ジョエル・トレド、リウ・バロッキ、アナ・テレサ・ゴンザガ、秋山珠子、マリナ・ヒメネス、ルシア・バルバディーリョ、アナ・マリア・ロペス、スサナ・リアスエロ、ステファニー・ダルフォンド、ルイサ・マリア・アリアス、イネス・ペレイラ

第2部 静けさと虚ろさのかたち(Forms of silence and Emptiness)

1. フーガの技法

(エスペリオンXX/ジョルディ・サバール指揮)
マリナ・ヒメネス、ジェンティアン・ドゥダ

2. トッカータとフーガ ニ短調

(トン・コープマン:オルガン)
ジョエル・トレド、ディモ・キリロフ、アマウリー・レブルン、イサック・モントロール、ホセ・カルロス・ブランコ、スウィー・ブーン・キュイク、ファブリス・エデルマン

3. オルガンのためのトリオ・ソナタ第6番 ト長調

(トン・コープマン:オルガン)
アナ・マリア・ロペス、スサナ・リアスエロ、ステファニー・ダルフォンド、リウ・バロッキ、アナ・テレサ・ゴンザガ、ルシア・バルバディーリョ、ルイサ・マリア・アリアス

4. 死と永遠を想うコラール

(ジョセフ・ペイン:オルガン)
イネス・ペレイラ、アレサンドロ・アルヴァレス

5. シンフォニア

(アムステルダム・バロック・オーケストラ、合唱団/トン・コープマン指揮)
イネス・ペレイラ、ヨランダ・マルティン、アレハンドロ・アルヴァレス

6. 教会カンタータ「我がうちに憂いは満ちぬ」

(バルバラ・シュリック:ソプラノ、アムステルダム・バロック・オーケストラ、合唱団/トン・コープマン指揮)
秋山珠子、ジョエル・トレド

7. フーガの技法

(エスペリオンXX/ジョルディ・サバール指揮)
アレハンドロ・アルヴァレス、全ダンサー

8. フーガの技法

(エスペリオンXX/ジョルディ・サバール指揮)
全ダンサー

感想

待望の、そして念願のドゥアトです。本家本元がたった2日間の横浜での公演のために来日してくれました。招聘してくれた神奈川国際芸術フェスティバルの感謝。できればこの公演が集中する週末ではなく1週後ろならば両日とも通ったのに、と残念でなりません。こんな素晴らしい公演を横浜でたった2日なんてもったいなさ過ぎます。

初めて見るのでダンサーの区別はほとんどつきません。名前と顔が一致するのは、最初と最後に踊るドゥアトと、秋山珠子さんとバッハ役のアレハンドロ・アルヴァレスだけ。でもどのダンサーにもドゥアトの振付言語がしみ込んでいて、カンパニーとしての強い色が出ていたと思います。ダンサーの個性も透けて見えてきたけど、まずは初めて見る作品にひたすら喜びを覚えているだけで、やっぱり各ダンサーへの印象までは掴めなかった。せめてあと1回、欲を言えば2回か3回位、いろんな席から見てみたかったです。

プロローグ「ゴールドベルグ」でドゥアトが登場した時、すーっと鳥肌が立ちました。目の前に彼がいる!と。これから始まる作品の語り部であり音楽の源でもあるバッハに、作品の魂を託すように踊るドゥアト。よいプロローグでした。でも、ちょっとがっかりだったんだ。何故ならチラシやNHKの「週刊シティ情報」で紹介された作品映像でバッハを踊っていたのはドゥアト自身だった(ように見えた)から。「あ、ずっとドゥアトが舞台にいる訳じゃないのね・・・」って。

入場時から緞帳があがっていて舞台が見えていたのだけど、プロローグの最後にバッハを手前に置いて幕が降りました。そして再度幕があがって「世俗カンタータ」。ダンサーたちがオケの楽器なってバッハの指揮で鳴り響くのは、ちょっぴりユーモラスでもあり。でも、それはなんとクリアなメッセージでしょう。ダンスとは音楽を表現することだ、というドゥアトの言葉が思い出されました。

その次の「無伴奏チェロ組曲第1番」は、この作品のシンボル的パート。椅子に座ったバッハが女性ダンサーをチェロに見立てて演奏するもので、意味深な振付。それは直接的に男女の愛の交歓を思わせますが、演奏者が楽器を響かせることと男が女を歓ばせることを重ね合わせるドゥアトの発想にハッとさせられました。チェロという楽器の響きは、演奏者が筐体を両足で挟み本体だけでなく自分自身の身体をも響かせることで深みが出る訳で(ほとんどの楽器は、何かしら演奏者の身体を筐体として利用していますが)、その2者の共存関係をもサラリと表現してしまうのですからドゥアト恐るべし。

そしてこの演奏者と楽器の構図は、バッハの音楽がドゥアトにダンスの振付を促したとも置き換えられるし、振付家ドゥアトがダンサーを踊らせる様子だとも解釈できる。ドゥアト自身がバッハを踊ればそれは顕著だったでしょうね。とにかくこのパートが、ダンスの本質を全て表しているような気がしました。元々好きな曲ですが、この曲があれほどエロティックで意味深に聴こえたのは初めて。

強烈に印象に残って、いろいろ考えながら見ていたのはここまで。あとは頭の中を空っぽにして、ひたすらバッハの音楽と目の前で踊るダンサーの姿を追っていました。至福。細かい部分はもうけっこう忘れちゃって具体的に書けないのですが(汗)、胸板の厚い男声ダンサーが2人でコルセットのようなチュチュでファニーに女性の舞いを踊るファニーな断片はあるものの、基本的にはダンサーが楽器となって音を視覚化したのが第1部。音楽の世界を視覚化したのが2部。2部ラストに出て来たドゥアトが冒頭のダンスのリフレインで自らひもといた作品にまた鍵をかける時、音楽の永遠性を感じました。美しいエンディング。

色合いも含めた衣装、ライティング、舞台奥に足場のように組まれた階段(時にダンサーがカーテンのような黒い幕を動かして見せたり隠したりする)装置など、ドゥアトの圧倒的なセンスの良さをも再認識しました。彼の場合、クールで取りつく島がないというよりは、センスの良さを時々さらりとハズして見せるユーモアも持ち合わせているので、余計に夢中になってしまうんですよね。

本当に楽しかったし、終演後は「もう終わっちゃった」と泣きたい気分になりました。ああ、どこかでこの映像を出してくれないでしょうか。どうしてももう1度見たい・・・。

そして、CD買ってバッハを聴き込まなきゃイケない気がしてきました。バッハも音楽も何も知らなくてもドゥアトのダンスは楽しめるけど、知識があればあるほど深い部分まで堪能できるようになっているので、そこまで堪能しなくちゃもったいない、という気になったのね。バッハの良さまで再認識させてもらって、更に深くドゥアトを愛するようになりました。あの観客の熱烈なカーテンコールに応えて、また近いうちにカンパニーの来日がありますように。

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