- 2006/12/29 15:07|
- Category: 新国立劇場バレエ|
クレジット
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/監修・演出:ウェンデイ・エリス・サムス/舞台美術・衣装:デヴィッド・ウォーカー/照明:沢田祐二/装置・衣装制作:英国ロイヤルバレエ
指揮:エマニュエル・プラッソン/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場オペラ劇場
キャスト
シンデレラ:宮内真理子
王子:山本隆之
義理の姉たち:保坂アントン慶、堀 登
仙女:川村真樹
父親:ゲンナーディ・イリイン
ダンス教師:グリゴリー・バリノフ
仕立屋:澤田展生
洋服屋:神部ゆみ子、楠本郁子
靴屋:吉本泰之
床屋:佐々木淳史
宝石屋:井口裕之
御者:末松大輔
春の精:寺島まゆみ
夏の精:真忠久美子
秋の精:遠藤睦子
冬の精:厚木三杏
道化:八幡顕光
王子の友人:陳秀介、冨川祐樹、江本拓、マイレン・トレウバエフ
ナポレオン:伊藤隆仁
ウェリントン:貝川鐵夫
感想
素敵な公演でした。特に宮内真理子さんのシンデレラは2003/2004シーズンの時に降板されたこともあり、ずっと見たかったので感慨もひとしお。待ち望んでいたものを見られた喜びもあったと思うのですが、表情豊かな上半身とアシュトンの振付を鮮やかに刻む脚のバランスがひたすら素晴らしかったです。彼女の腕がすぅっと伸びるたびに,指先からこちらにシンデレラの感情や音符の1つ1つが漂い出てくるようで・・・何とも言えず幸せな気持ちになりましたし、何だか胸が一杯になりました。
1幕、宮内さんのシンデレラは健気でした。今まで新国立と2005年のロイヤル公演と映像で何人かのシンデレラを見ましたが、プロダクションの特徴としてシンデレラは前向きな少女と描かれていると思います。母の不在を悲しんでいるけれど義姉たちのことも好きだし、小間使いのように働くことも当たり前のように受け入れている。ただ、舞踏会に行けないことは淋しい、という感じかな。宮内さんも当然前向きなシンデレラになっているのですが、何だろう、ご本人の持つ姫オーラが透けて見えるからでしょうか、「本来そういう仕事をするべきではない人が働いている」感じがしたのかもしれません。それが「けなげ」に見えたのかなぁ。
シンデレラの自宅のシーンはアシュトン流のパ・ド・ブーレなど細かいパが多く、今回見たコジョカルもさいとうさんもポワントの音がかなり目立っていたのですが、宮内さんはほとんど音をさせていませんでした。ポワントの音が「ドドドドッ」とすると、何となくシンデレラが雑な女の子に見えてしまったりもするので、その点でも宮内さんはとてもよかったです。
姫チュチュに着替えた宮内さんは、見事なまでの姫オーラを発していて溜め息がでる程でした。彼女の華は観客へのアピールが一種独特で、日本人離れしている気がします。嫌みなくスマートに、でも最大限に観客と対話できる人。憧れの舞踏会に出席するためにお城にいる感激や王子を慕う気持ちを、あんなにも能弁に語るアームスはそう見られない気がするの。これを書いているのは公演から3週間近く経ってからですが、今も鮮やかに焼き付いています。彼女にはもっと新国立の舞台の真ん中に立って踊ってほしいと熱望。1年に1回なんてもったいない。
この日のアグリー・シスターズは保坂アントン慶さんと堀登さん。アントンさんはアクリさんと比べるとかなり体格が立派ですか?衣装に足し布してありましたよね(笑)。服がうまく着られなかったりネックレスをつけるのに手間取ったり、ちょっとバタバタしてお気の毒でした。アクリ姉を見てると地味に見えますが、初役としてはハジケてて楽しく見ていました。堀さんの気弱な妹って、ホントに八の字眉毛で笑っちゃうんですよねー。
ダンス教師はバリノフくん。彼のダンス教師は、吉本さんのそれとはまたちょっと違う味で、おとぼけが入って楽しいんですよね。そして、脚の動きが美しい。この日は靴屋のおじいちゃまが吉本さん!で、ものすごーい演技してて目が離せなくなっちゃいました。メイクも一瞬誰だかわからない程だったし、そんなになりきられてしまっては他に目がいかなくて困りますー。この義姉たちの身支度シーンは見所が多すぎてホントに困ります。
さて、この日の仙女は川村真樹さん。彼女、すごく存在感が出てきましたねー。いろんな役で経験を積んだことが、今回全て華となって表れていました。持ち前の踊りの柔らかさと身にまとった優しげな雰囲気も合わせて、仙女にぴったりでした。登場して最初のソロを見ているうちに泣けてきましたよー。なんてキラキラしているんだ、と。これならオーロラ姫も期待してよいですねっ。すごーくすごく楽しみです。
四季の精は前半組とは雰囲気が違って楽しめました。春=寺島まゆみさんは、こういう輪郭のはっきりした踊りがよくお似合いですね。ワガノワ風味なんですが、彼女のキャラが生かされた踊りだと思いました。あとはやっぱり冬の三杏さん。寺島ひろみさんがどれだけ美しい「冬」を演じようとも、私の中では冬は厚木三杏さん以外有り得ないのです。彼女の「冬」が見られただけでこの日の目的1/3は達成できたって感じ。この日も素晴らしい「冬」でした。ああ、なんて美しい背中なのかしら。
道化は本日も八幡さん。前回見た時に「踊りが重くなった気がする」と書いたのですが、今日見たら、全然重くなかった。というよりもむしろ、安定して来たんですね。気負いなく踊っている感じ。道化キャラも彼らしさが出て来て、今後が楽しみになってきました。王子友人チームは中村さんと入れ替わりでマイレン加入。王子役を見た直後のせいか、友人たちの中でも一番生まれが尊い人に見えました(笑)。
ナポレオン/ウェリントンは伊藤隆仁/貝川鐵夫コンビ。私、伊藤さんのナポレオン大好きなの〜。ホントに素晴らしいです。いく久しくご出演頂きたい。貝川さんもすっとぼけたウェリントンで、私は市川さんのより好きかもしれないなー。いい組み合わせでした。
さて、山本隆之さんの「シンデレラ」王子も、実は初見でした。前回のシンデレラ、怪我で途中降板されちゃったからね。宮内さんとはとても相性がよいと思いました。というか、この人ホントに年上と踊ってる方がいいんだわ(笑)。宮内さん自身がすごくバランスよい人ではないかと思うのでサポートもいつもより全然楽そうだったし、踊りが完璧なユニゾンとなっていて、おおっ、と感心しました。クラシック演目でそこまで彼にぴったり合ったパートナー、初めて見たかもしれない。最後のパ・ド・ドゥで宮内さんがバランス崩しちゃったのはちょっともったいなかったけどね。
ただ、本人の調子としてはあまり良さそうではありませんでした。特にヴァリアシオンは、ここのところ何回か見た中では一番不安定だったかも。故障でなければよいのですが。踊り以外で言うと、シンデレラの王子って名前もないただの「王子」だし、アシュトン版は特にひたすらノーブルさが要求されるだけであとは別に性格を膨らましようがない役なんだけど、山本さんの王子は誠実で青年らしさがあって、とても好感が持てました。
ということで、とても素晴らしいクリスマス・イブの公演でした。宮内さんと山本くんの組み合わせはもっともっと見たいなー。すごくいいペアだと思うよ。
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