- 2006/12/14 22:07|
- Category: マリインスキー(キーロフ)バレエ|
クレジット
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/振付:マリウス・プティパ/レフ・イワノフ/改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ/台本:ウラジーミル・ベーギチェフ/ワシーリー・ゲーリツェル/装置:シモン・ヴィルサラーゼ/衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨーワ
指揮:アレクサンドル・ポリャニチコ/管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
東京文化会館
キャスト
オデット/オディール:ダリア・パヴレンコ
ジークフリート王子:アンドリアン・ファジェーエフ
王妃 (王子の母):エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師:ピョートル・スタシューナス
道化:アンドレイ・イワーノフ
悪魔ロットバルト:マキシム・チャシチェゴーロフ
王子の友人たち:ダリア・スホルーコワ/オレシア・ノーヴィコワ/マキシム・ジュージン
小さな白鳥:ワレーリア・マルトゥイニュク/イリーナ・ゴールプ/エレーナ・ワシュコーヴィチ/オレシア・ノーヴィコワ
大きな白鳥:エカテリーナ・オスモールキナ/クセーニャ・オストレイコーフスカヤ/アリーナ・ソーモワ/エカテリーナ・コンダウーロワ
2羽の白鳥:ダリア・スホルーコワ/クセーニャ・オストレイコーフスカヤ
スペインの踊り:ガリーナ・ラフマーノワ/リーラ・フスラーモワ/イスロム・バイムラードフ/アレクサンドル・セルゲーエフ
ナポリの踊り:ヤナ・セーリナ/マクシム・フレプトーフ
ハンガリーの踊り:クセーニャ・ドゥブロヴィナ/カレン・イワンニシャン
マズルカ:スヴェトラーナ・フレプトーワ/イリーナ・プロコフィエヴァ/オリガ・バリンスカヤ/ガリーナ・ラフマーノワ/アレクサンドル・クリーモフ/アンドレイ・ヤーコヴレフ/フョードル・ロプホーフ/ニコライ・ナウーモフ
感想
まだ前夜のロパートキナ白鳥の余韻が残る中、マチネのパヴレンコ白鳥。あんな素晴らしい舞台の後にまたすぐバレエを見るなんてとてももったいない事だと思うけど、3年に1回の来日公演とあっては見逃す訳にもいきません。この日は2F-Rでの鑑賞。サイドとはいえ、少しでも上から見ると群舞の美しさが際立ちます。一糸乱れず、という程ではないけれど、粒が揃っていて美しい。
この日の王子はファジェーエフ。ようやくここでキラキラのファジェーエフが見られました。1幕の黒い上着に白タイツ姿は見目麗しくひたすら眼福。もう他の何も見たくない位(笑)。複数公演を見たからこそ気付いたことですが、ファジェーエフ王子はみんなでわいわい騒ぐのも嫌いではないようですが、より内向的で読書がお好きなようでした。道化がお酒と本 どちらがいいですか?と見せると、少しだけ躊躇ってから本を選ぶような人なの。きちんと育てられた王子だから村人たちが自分の誕生日を祝ってくれるのは嬉しいし一緒にいようとも思うけれど、どこか自分の中に空虚な穴があって孤独にも見える。もしかしたら書物の中に空虚さを埋める答えを探していたのかもしれませんね。
パ・ド・トロワは、スホルーコワ/ノーヴィコワ/ジュージン。ジュージンくんの衣装はシクリャローフのそれよりも青緑がかって見えましたが、見る位置のせいでしょうか?たぶん実際色が少し違っていたのだと思うのですが。シクリャローフのサポートが不安定だったので、ジュージンくんはどうかと思って見ていましたが、彼のサポートも不安定でした。スホルーコワもノーヴィコワも踊りに勢いがあるタイプなので、しっかり受け止めてあげないといけないから大変だよね。本日も道化のイワノフは全く衰えない超絶技巧。あの回転速度、私が見た公演中1度も衰える事がなかったことに脱帽。・・・ほとんどシングルキャストだった主役以外のキャストについては、初日の分にかなり書き込んだので大幅に端折ります。
さて、パヴレンコの白鳥。3年前の公演で評判の芳しくなかった彼女ですが(同情すべき点も多々あると思いますが、私はその公演は見ていないので・・・)、ガラで初めて見た彼女の踊りを見て、私はこの公演をとても楽しみにしていました。そう、私の大好きなムーヴメントの持ち主なんですよ、彼女。2F-RのB席だったため、彼女が舞台に登場するところはポワントで動くところがまるまる見えず、視界に入ったのはアラベスクの為に1歩踏み出したところからだったのが、本当に残念でした。
彼女のオデットは、登場した時はまるで冷たい氷の表情。この先誰かが自分に愛を誓うことなどあるはずもないと嘆き疲れて全てを諦めたかのよう。それが真摯に愛を誓う王子(しかも見目麗しいファジェーエフ♪)の熱情に触れて、その氷が溶けるように人間の女性としての感情が甦っていくようでした。たおやかな舞いは決して能弁ではないのに目が離せず、彼女の世界へ引き込まれてしまいました。
オディールの衣装には金の飾り付き。ロパートキナが赤系、ヴィシニョーワがブルー系でしたから、それぞれの個性の違いを楽しみました。パヴレンコは総じて黒鳥より白鳥がよかったのですが、オディールにも品格がありました。彼女も妖艶さで王子を陥落させるのではなく、何か強い磁力を発して王子を絡めとっていくようでした。まぁファジェーエフみたいな物静かな王子は色仕掛けでも陥落しないだろうけど(笑)。
3幕でのアラベスクで下がるところについてはそれぞれの違いが面白かったので書き留めておきますが、パヴレンコは10月の新国立でザハロワがそうだったように、音楽に合わせて「すっすっとまる」で離れていきました。彼女のその表現にも王子の裏切りに対する怒りはなく、心を開いて愛した人と永久に別れなければならない悲しみが満ちていました。ロパートキナのそれには、その運命に対する覚悟のようなものが色濃く見えたけれど、パヴレンコはただひたすら悲しんでいるように見えた、かな。
正直に言うと彼女のオデット/オディールは、ロパートキナの細部まで熟考して練り上げられた芸術的なそれと比べてしまうと、物足りなさを覚える部分も確かにありました。でも、キーロフの伝統を体現しているかのようなパヴレンコの白鳥は、だからこそセルゲーエフ版にとても似合っていたように思います。典雅で、そして少し古風。上半身がいつどんな時もひたすら優雅で美しく、少し昔のキーロフ・ダンサーの美質に近いものを感じました。
技巧の鮮やかさで魅せるタイプでもドラマを際立たせるタイプでもないのに、なぜこんなに彼女の踊りが気に入ったのか、、、自分でもまだ答えが見つからないのです。ただ、彼女は役柄を自分に引き寄せるのではなく、自分が役柄と振付に寄り添う事で作品に込められた意味を大切に表現することができるダンサーだから、作品そのものをより楽しむことが出来たような気がしています。
残念なことにファジェーエフとのパートナーシップは完璧とは言えず、どこかぎこちなさや違和感を感じながらの鑑賞となりました。悪くはないのだけど、、、普段はあまり組まないペアなのでしょうか?ファジェーエフのサポート自体生彩を欠いていたように思うので、疲れが溜まっていたせいなのかもしれませんけれど。ただ、2人ともヴァリエーションはとてもよかったので、余計に不可解(笑)。
サイドからではあったものの、上から見たコール・ドは素晴らしかったです。衣装の美しさも際立って見えました。観客もみな感激したようで、カーテンコールは熱く長かったです。パヴレンコもファジェーエフもとても嬉しそうでした。昨夜のような動けないほどの衝撃と等しいような感動というのではないのですが、何とも言えず暖かい作品を見たという気持ちで、満ち足りたひと時になりました。
- Newer: 「白鳥の湖」マリインスキー・バレエ(2006.12.09S)
- Older: 「白鳥の湖」マリインスキー・バレエ(2006.12.08)