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「オールスター・ガラ」マリインスキー・バレエ(2006.12.04)

クレジット

指揮:アレクサンドル・ポリャニチコ/演奏:マリインスキー歌劇場管弦楽団
東京文化会館

第1部

「レベランス」

音楽:ギャヴィン・ブライアーズ/振付:デイヴィッド・ドウソン

ダリア・パヴレンコ/ソフィヤ・グーメロワ
ヤナ・セーリナ/アレクサンドル・セルゲーエフ
ミハイル・ロブーヒン/マキシム・チャシチェゴーロフ

話題のデヴィッド・ドウソン作品+竹島由美子さんの衣装、ということでかなり楽しみにしていました。えーと、たぶんダンサー的には身体能力の高さを要求されて踊りがいのある作品なのだろうと思います。でも見てる方としては、構成的に盛り上がりに欠けていたかなー。ダンサーの顔が判別しにくい程度の照明(部分的に、ところどころ明るくなることはあるが)のままで終始するのは踊るダンサーに匿名性を与えるので、純粋に彼らのムーヴメントや肉体を楽しめということなのかもしれません(その中で目を惹いたアレクサンドル・セルゲーエフはすばらしい)。しかし、「誰」がどう踊っているかを確認しながら見る癖がついている私は、その分だけキツかった。

グーメロワはここでも気に入りました。「ライモンダ」のヴァリで見た感じだとクラシックがお得意かと思うのに、バランシンもよかったしコンテもイケる。気になるダンサーの1人になりました。パヴレンコのムーヴメントもかなり独特で名刺をぶら下げて踊っているよう。嫌いじゃないですね。セーリナは驚異の柔軟性。男性陣はセルゲーエフくんが目をひきましたが、ロブーヒンも確実なタイプだよね。チャシチェゴーロフくんは最後お疲れだったかな。

第2部

「ばらの精」

音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー/振付:ミハイル・フォーキン
ダリア・スホルーコワ/イーゴリ・コールプ

コールプのばらの精はもっと邪悪で妖しいのかと想像していましたが、割と抑えめだったでしょうか。彼がアームスを動かすたびに周囲に生まれる空気は独特ですね。薔薇の芳香というよりはコルプの芳香、という感じ。マリインスキーの殿方ですから当然パートナーへの敬愛と丁寧なサポートがある訳ですが、プラスされる彼独自の役作りがツボに入りやすいんでしょうかね。彼の場合ナルシズムはあまり感じなくて、自己プロデュース力に長けているのかな、とぼんやり思いました。次に出てくる時どんな風なのか、期待してしまうダンサーです。

少女役のスホルーコワは頭のちっちゃくて手脚の長い、少女らしいダンサー。衣装も髪型もよくお似合いでした。

「タリスマン」

音楽:リッカルド・ドリゴ/振付:マリウス・プティパ
エカテリーナ・オスモールキナ/ミハイル・ロブーヒン

オスモールキナはやっぱり若手ではかなり好きです。安定しているし、、と思ったら、途中で足を滑らせて(というかサポートの失敗?)、そこからちょっと不安定に。痛めてなければよいのですけれど。ロブーヒンもプレゼン力のあるダンサーで、客席の視線を捉えるのが上手い。あのサポートが上手くいってたら私の中ではもう少し好感度が上がったと思うんだけど、いずれにしても2人で踊ると若さで舞台が輝いてました。若いっていいわー。やっぱりこの演目はロシア人ダンサーで見るべきだよな、と強く思いました。

「ロミオとジュリエット」バルコニーの場

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/振付:レオニード・ラヴロフスキー
イリーナ・ゴールプ/ウラジーミル・シクリャローフ

見た目は見目麗しいペアで完璧にロミオとジュリエットなんですけどねー、シクリャローフくんはこれを踊るには準備不足。ハラハラするリフトといい、演技で魅せるところまで到達できないとロミジュリは厳しいよねー、残念ながら。お気に入りではありますが、彼は踊りそのものの美で見せる演目の方がまだ向いているような。だから、白鳥のパ・ド・トロワはきっといいと思うの。大いに期待しています。

ゴールプの方がこの演目は踊りなれているだけあって、「お姉さんが教えてあげる」状態でした。私はクラシックチュチュで踊る演目よりこういう方が彼女に合っている気がするなー。ラヴロフスキー版の古風な感じが、彼女の現代的な面を少し和らげるのかもしれない。好みはあると思いますが、私はチュチュの彼女はちょっと元気がよすぎると思ってしまうのですよね。華やかだし、得難いキャラではあるとわかっているのですが、余分な力があと少し抜けるといいのになーと。

「グラン・パ・クラシック」(オーベールのパ・ド・ドゥ)

音楽:ダニエル・オーベール/振付:ヴィクトール・グゾフスキー
ヴィクトリア・テリョーシキナ/レオニード・サラファーノフ

テリョーシキナ、品格があってこの演目にぴったりですね。バランスなんかはもっと長くとってくれるかと期待してたのですが、その代わりピルエットの回転の早さといい音に合わせてピタッと止める鮮やかさといい、お見事でした。サラファーノフは作品に見合う風格は少々不足していると思いましたが、その分を怒濤のテクで補って観客を魅了。やっぱり「オールスター・ガラ」と銘打つのであれば、せめてパ・ド・ドゥ集はこのクラスの格でもって畳み掛けて欲しいと思うのが本音、かな。満足のいく演目でした。

「眠れる森の美女」第1幕のアダージョ

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/振付:マリウス・プティパ/改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ
ディアナ・ヴィシニョーワ
マキシム・チャシチェゴーロフ/セルゲイ・サリコフ/アレクサンドル・セルゲーエフ/デニス・フィールソフ

ローズ・アダージオを含む一連のヴァリエーション。私は最近のヴィシニョーワが演ずるマーシャとか16歳のオーロラとかの演技がとても好き。見ていて元気をもらえるし、それこそ余分なものが取れてシンプルに、より美しくなってきていると思います。ピンクのチュチュもよく似合っていてうっとりしました。どうやらポワントのかかとが外れるアクシデントがあったということですが、動じずに踊り収めるパワーにも脱帽。

「パヴロワとチェケッティ」

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/振付:ジョン・ノイマイヤー
ウリヤーナ・ロパートキナ/イーゴリ・コールプ

ローズアダージオの後に、同じ「眠り」の間奏曲を使った「パヴロワとチェケッティ」という構成も何だか素敵。この演目がこの公演の白眉でした。幕があくと、舞台奥に置かれたバーの傍に杖をついて立つチェケッティ役のコルプ。白髪まじりでひげをつけ、黒地にピンクのバラモチーフつきベスト。その、パヴロワを待つ姿からして引き込まれました。そこへロパートキナが白のふんわりしたチュチュ(外側はシンプルな1枚のスカートで内側はほんのりピンク)と首に黒いチョーカー、そしてピンクとモーヴの中間色のショールをかけて登場。このチュチュ姿が何とも言えず美しかったです。

バーレッスン、フロアでのパ・ド・ドゥ、そのどれもが繊細で互いへの尊敬の念に溢れていて、息をひそめて2人のレッスンをドアのすき間から覗き込むバレエ学校の生徒のような気持ちになりました。薄紙で包んで美しい箱に入れてしまっておきたいような作品でした。今思い出してもじんわり泣けてきます。レッスンの様子をバレエにしたものは他にもあるけれど、これほど美しい作品は他に知りません。ノイマイヤーとロパートキナ、コルプに感謝を捧げたいです。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/振付:ジョージ・バランシン
オレシア・ノーヴィコワ/アンドリアン・ファジェーエフ

ファジェーエフ登場!ということで楽しみにしていました。が。ここまでもオケがちょっと、な場面はあったのですが、この曲のオケはひどすぎました。その分を割り引いて考えてあげなければいけないのですが、もしかしてノーヴィコワはあまりこの曲を踊るには適さないダンサーなのではないでしょうか。元気がよすぎるというか、ただ踊りを披露するモードに見えてしまったんですよね。ファジェーエフとの間も「愛」が見えず「師弟関係」っぽかったし。ファジェーエフもちょっとお疲れだったのかもしれないし、ちょっと不完全燃焼でした。残念。

ファジェーエフはガラ2つともバランシンだったので、できればもっと別ので見たかったという気もします。

第3部

「エチュード」

音楽:カール・チェルニー/編曲:クヌドーゲ・リーサゲル/振付:ハラルド・ランダー

アリーナ・ソーモワ/レオニード・サラファーノフ/ウラジーミル・シクリャローフ

同じメソッドで育った人たちだからさぞや綺麗だろうと楽しみでした。でも最初の方はかなりバタバタ。黒チュチュの子たちで揃ってない(揃える気がない?)人がいるのがとても気になったし、バーの下げ忘れで袖から女性の声が聞こえたりインカムつけた男性が指示しながらバーを下げにきたり、どうなることかとハラハラしましたよ。でもやっぱり、ポーズを取って立っている姿は本当に美しいんだよね。パンフにも使われている、バーに足をかけた2人のダンサーが影に浮かぶところなんてため息が出るほど美しかったです。コール・ドの踊りに関しては、全体的に練習不足かお疲れかという感じで生彩を欠いていました。この作品にはもう少し「ピンと張りつめた空気」が必要だと思うよ。

ソリスト3人も若手なので、「バレエ団のプリンシパルが真ん中をつとめる圧巻の興行」という重厚さは求むべきもありませんが、「若手で魅せます!」なら「有り」かな。それにしてもサラファーノフがいなかったらここまで盛り上がらなかったでしょうね。彼のスタミナと超絶技巧は素晴らしい。さらっとすごい技を連発して客席大盛り上がり。「サラファーノフ・オン・ステージ」でした。

ソーモワは、多分今回の公演で見るのはこれが最初で最後だったと思います。好みド真ん中のダンサーではないのですが、華があってアームスも綺麗、かつ体力もある。ただこの演目だけでは私には彼女の魅力が何とも判断付かなかったので、他の演目でも見てみたかったな。
(追記:と、思ったら「白鳥」の大きな4羽の白鳥にキャスティングされていました)

シクリャローフは、ロミオよりはよかったと思います。彼に限らず若手のコを見ていると、踊り慣れた役とそうでない役の差が非常に激しいですね(それが若いってことなのかもしれませんけども)。この辺の経験値による出来不出来の差が少なくなると、階段を1つ上に登れるのでしょう。そんな彼らがこの「オールスターガラ」に多くキャスティングされた為に、演目の完成度にかなりバラつきが出てしまったようです。せっかくの来日公演なのだから、プリンシパル級をたっぷり魅せて欲しかったなー。「若手の夕べ」って公演なら納得だけど、チケットは買いにくい(笑)。個人的には好きなバレエ団の若手を堪能できる公演も楽しいのですが、その場合にはもう少し踊り慣れた演目を持ってきてもらわないと。そして、公演日程にもう少し余裕を持って、チケット価格も考慮して欲しい(笑)。まぁこれはツアーで世界各地を点々としている関係上、JAさんにはいかんともし難い点があるでしょうけれど。

で、シクリャローフに話を戻すと、この演目は彼なりに自信を持って踊っておりました。プリンシパル・ロールであることを思うと物足りないけど、彼を観察するのにはよい演目でした(趣旨がズレているけれど)。観察の結果、マリインスキーの先生方やワジーエフには、彼の資質を見極めてちゃんと育てて行っていただきたいな、と。このコ、歩みが遅いタイプのような気がするのよ。次に見る時どんな感じに育っているか、楽しみにしたいと思います。


ということで、前2つのベネフィスに比べると、どうも不完全燃焼なガラでした。時間も押して終演は10時を回っていたし、月曜からこれはかなりキツかった。この公演をご覧になった同志のみなさん(笑)、本当にお疲れさまでした。

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