- 2006/11/20 12:10|
- Category: 新国立劇場バレエ|
キャスト
オデット/オディール:スヴェトラーナ・ザハロワ
ジークフリード王子:デニス・マトヴィエンコ
ロートバルト:市川透
王妃: 豊川美恵子
道化:八幡顕光
家庭教師:ゲンナーディ・イリイン
王子の友人:高橋有里/さいとう美帆/マイレン・トレウバエフ
小さい4羽の白鳥:遠藤睦子/西山裕子/本島美和/大和雅美
大きい4羽の白鳥:真忠久美子/厚木三杏/川村真樹/寺島まゆみ
式典長:末松大輔
花嫁候補:真忠久美子/本島美和/川村真樹/寺島まゆみ/丸尾孝子/堀口純
スペインの踊り:西川貴子/湯川麻美子/マイレン・トレウバエフ/冨川祐樹
ナポリの踊り:高橋有里/さいとう美帆/江本拓
ルースカヤ:伊藤友季子
ハンガリーの踊り:遠藤睦子/奥田慎也
マズルカ:楠元郁子/千歳美香子/堀岡美香/北原亜希/陳秀介/中村誠/高木裕次/澤田展生
2羽の白鳥:厚木三杏/川村真樹
大きい4羽の白鳥:湯川麻美子/真忠久美子/寺島まゆみ/西川貴子
クレジット
振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ/作曲:ピョートル・チャイコフスキー/改訂振付・演出:牧阿佐美(コンスタンチン・セルゲーエフ版による)/台本:ウラジーミル・ベギチェフ、ワシリー・ゲリツェル/舞台装置・衣装:ピーター・カザレット/照明:沢田祐二
指揮:渡邊一正/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場オペラ劇場
感想
新製作ということなので、覚えている限り順番に書いていこうと思います。
序曲が始まってしばらくしてから幕があがり、紗幕に描かれた風景。痩せた木々の向こうに湖が見えます。向こう側の湖畔には朽ちそうな古城も見えて、全体的に忘れ去られた場所のような印象。そのうち舞台が明るくなって、紗幕の向こうにお姫様らしき女性が刺繍をしているのが見えます。事前情報で姫が白鳥に変えられるところを序幕に入れる、と聞いていた時にブルメイステル版の印象があったので、きっと屋外のセットなのだろうと思っていたのですが、城内の一室だったことが意外でした。部屋の両脇には白鳥が羽を休めている形のオブジェが3つずつ並んでいます。
この時の刺繍をするザハロワの針使いは上手かった。お姫様の趣味という感じでおっとりと美しい運指。そこに女官らしき女性も2人登場して一緒に刺繍。しかし1人が「踊りましょうよ」という感じで立ち上がり、3人で軽く踊ります。すると急に空が荒れて雷が鳴り始めます。ここでおつきの女官は大変!という感じですぐいなくなってしまうんです。姫を置いて逃げるのか!と突っ込みたくなりました(笑)。姫は高窓の方に近づき空を心配そうに見やるのですが、そこにはロートバルトが羽を広げて待ち構えているのでした。ロートバルトが羽で彼女を包み込むと、その後方に白鳥の(チュチュ)姿が・・・
と、ここまでが序幕。たぶんロートバルト役の市川さんが出て来て羽を広げたのだと思いますが、この広げ方が綺麗でとても効果的でした。後ろに白鳥が出てくるタイミングもよかったと思う。
1幕。
舞台が明るくなると、後ろに湖が見える城内。ここにも白鳥のオブジェがありました。まずは男性の友人たちが数名いて、そこに男性女性と人が増えていくのですが、まずここで1つ疑問が。王子の友人の1人が弓を持って踊っているのですが(王子が母王妃にプレゼントされるものとは違うんでしょうけど、正確なところは不明)、王子が成人の祝いにプレゼントされるような「象徴」としての弓なのに、その友人が持って踊っているというのが理解できず。
ここに登場する友人たちは白とグリーンの衣装でした。次に道化が登場。この日は八幡さんで、最初はちょっと固かったんですが、パ・ド・トロワにからむ辺りからぐっとほぐれたみたいで、あとはとてもよかったと思います。前回見た時よりわざとらしさや余計な力が抜けて、自然だった。道化の衣装は、エンジと薄紫の組み合わせだったかな?はっきりした色ではなかったと思います。翌日のバリノフくんは、道化の顔つきの杖というか棒を持っていましたが、八幡くんはどうだったか忘れちゃいました。そうそう、次々と登場するワルツ群の先頭に吉本さんの姿を見て嬉しかったです。
家庭教師のイリインさんも登場し、その後に王子マトヴィエンコ登場。綺麗なブルー系の上着に白タイツ。ちょっとゼレンスキーぽくなったなーと思ったのは髪型のせいかしら。まだ仲間と遊んでいるのが楽しい少年の王子でした。
王妃の登場では、豊川さんの王妃は王亡き後しっかりと国を守って来た威厳と賢さが見えて素晴らしかったです。明日は花嫁を選ぶのよ、というくだりはほとんどなくて、ただ去り際に「覚えているわね」とマイムするだけ。これはマイムの意味とストーリーを分かっていないと、意味が取りにくいかもしれませんね。
ワルツ群に目を奪われていたので、あまり王子と家庭教師との小芝居を見ていなかったのですが、どうやら家庭教師は、前のバージョンほど王子に読書を勧めてはいませんでした。もうだいたいの教育は終わったってことなのかしらー。それともホントにただの飲ん兵衛の家庭教師なんだろうか(笑)
パ・ド・トロワは高橋/さいとう/マイレン。マイレンの胴着はモーヴと薄い青との中間くらいの微妙な色合いの衣装でした。女性陣はグリーン系の細かい模様が入った部分とスカートは繊細なレース(にグリーン系のオーバースカート)だったと思うんですが、パールなどが縫い付けられた美しい衣装でうっとり。3人とも手堅いダンサーなので見ていて安心してられました。新国立のパ・ド・トロワは前から道化が片方の女性を追いかけるバージョンだったと思いますが、それは変わらず。でもこの辺りから指揮とオケとダンサーのリズムがちぐはぐになってきた気がする。
パ・ド・トロワのあと、ねぎらう王子が「そちらで飲みましょう」と上手側に誘うのですが、その時にちゃんと王子の後ろを通っていく高橋さんの姿が新鮮でした。そこまで気をつけた版ってあったかな?上手側のテーブル際では酔って眠りこけた家庭教師のイリインさんがいて、トロワの女性2人がからかっちゃおうか、という感じで家庭教師を舞台中央に誘って一緒に踊ります。それを見た道化が「僕が好きな人なのにー」とじたばたして、踊りのお礼に女性にキスしようとする家庭教師の邪魔をします。と、ここまでは従来通り。このあと、旧版では女性2人が家庭教師をくるくる回していましたが、今回は道化が家庭教師をくるくる回す役回りになりました。これはいい改訂だなーと。細かいところですが、嫉妬した道化がイタズラする方がいいような気がしません?
さて、お城にも夕刻が迫り、王子や友人たちは乾杯をしながらダンスをします。旧版は城内ではなく屋外での宴だったのでライトを灯した友人たちが街へ戻っていくのに王子は1人残るという感じでしたが、今回はお城の中での宴なので、客人たちが帰るのを道化や家庭教師が見送っていく、という感じなのかな。着替えの関係だと思うのですが、あっという間に客人たちが消えてしまうので淋しい感じがしました。
残った王子のソロ。新国立で見るマトヴィはたまに役に入り込むのに時間がかかるように見えることがあるのですが、この日は終始感情がこもった素晴らしい王子でした。もちろん踊りは文句なしに美しかったです。ソロを踊り終えた王子が湖の方に走り去って幕。
2幕。
紗幕の前に王子が登場し、ソロを踊ります。王子が上手へ去ったあと、紗幕の奥に浮かびあがる湖。旧版のロートバルトの登場があまりかっこよくなかったので、ここが変わっていて欲しい1番の場所だったのですが、変わったような変わってないような(笑)。えーと、上手後方にロートバルトの洞窟(パンフによれば)があり、その上にロートバルトが登場するのですが、セットが変わった分ロートバルトの歩く距離が減ったという感じでした。そこで翼を広げた後一度引っ込んで、洞窟の中から再度登場。そこでしばし踊った後に舞台奥で、白鳥たちを登場させるという感じ。ロートバルトの衣装はずっとよくなっておりました。白鳥たちの衣装も目立たないけどかなり美しいものでしたよ。新しく作った衣装を全部展示して欲しいなー。間近で見てみたいです。
ザハロワは多分自前の衣装だったと思います。私はライモンダでは彼女を見なかったので太ったとか絞ったとかはわかりませんが、とても集中力が高くすばらしい出来でした。ザハロワが白鳥を踊っている、というそれだけに感動・・・。あの脚のしなり、背中、アームス、それらを見てるだけで幸せ。彼女の場合、新国立劇場では白鳥たちの中で孤高の王女という感じがありますが、それが少し変化してきたかも、とも思いました。
マトヴィともいいペアだったと思います。このペアの最終日ということもあったと思いますが、2人ともテンションが高く、踊りの質が高かったですし。至宝のような白鳥を大切に敬う王子という図式だったので、敬う気持ちの強い愛情だったと思いますが、マトヴィのサポートもそんな丁寧さと美しいものをそっと扱うようなデリケートさがあったので、演技と踊りとが合っていて違和感がありませんでした。それに、この日の2人には有無を言わせぬ圧倒的なものがあったような。そういえば2幕のマトヴィ王子は弓は持って出てきませんでした。それ以外は旧版と同じだったと思います。
小さい白鳥は足音も1つにしか聞こえなかったしよく揃っていたと思います。下半身のぴったり具合に比べると顔は少しズレてたとは思いますが、全然問題なし。お見事でした。大きい4羽の白鳥も綺麗でした。真忠さんの上半身のラインが、さすが主役を踊った人だと思わせる美しさではっとしました。
3幕。
指揮の渡邊一正さんは拍手が鳴り止まないうちに間髪入れずに指揮棒振り下ろすんですよね。
幕があくと、ブラウン系で統一された内装。うん、私は新しい美術はかなり気に入りました。このバージョンでは花嫁候補はそれぞれのお国からダンスを披露する面々を連れて登場します。まずはスペインから順番に登場していくのですが、このやり方はけっこう気に入りました。ただ、6人の花嫁候補のうち、イギリスだけはダンサーではなく貴婦人と貴族を連れているんですけどねー。
その後に王子が王妃の手を取って登場。王子は白に金の飾りのついた衣装でした。王妃と王子が玉座についた後にファンファーレが鳴り、期待した王子が立ち上がるのですが、登場するのは花嫁候補たち。花嫁候補たちの衣装は白のドレスなのですが、それぞれお国の意匠をこらしたものになっているのがとてもよかったです。ヘッドピースもみんな違っていて素敵でした。一緒に踊ってきなさいと王妃に送り出された王子が6人の女性と次々に踊っていくのですが、ここのマトヴィの「心ここに有らず」な具合が何ともいえず。女性たちの踊りも少しずつ違っていて、ここにもお国柄が出るようになっておりました。選んだ人に花束を渡しなさいと、白い花束を渡される王子ですが、やはり選べずに、ジョークのつもりで「私に下さい」と花嫁候補の末席におどけて登場した道化に花を渡してしまいます。この時の素通りされた候補たちと、そのお付きの踊り手たちの落胆する表情も見ものでした(笑)。
次のファンファーレでオディールとロートバルト登場(順番を多少間違えているかもしれませんが)。オディールの衣装も、ザハロワは自前だったように思います。ロートバルトの衣装が変わっていたのは何よりでした!(笑)。緑系のマントとか鳥を思わせるヘッドピースと胴着といい、前に比べたらずっと素晴らしい。けっこう重そうだとも思ったので、着ていた市川さんは大変だったかもしれませんが・・・。オデットが来た!と喜ぶ王子を従えてオディールが去ったあとにディヴェルティスマン。
この日のスペインは西川/湯川/冨川/マイレン。安定した4人なのでピシっと締めてました。衣装はエンジ系とくすんだローズピンクだったかな?それに金で飾りがついたものでした。個人的にはスペインはもう少しだけハジけてもいいと思うのですが、この版は「お国の代表」であって悪の手先じゃないですからねー。ナポリはさいとう/高橋/江本。こちらも安定していました。江本さんもとてもよかったと思います。衣装は白と淡いブルーの組み合わせだったと思います、確か。(パ・ド・トロワと少し記憶が混じっているかも・・・)
そして期待のルースカヤ。この日は私は初見の伊藤友季子さん。とても素敵でしたー。ルースカヤはヘッドピースも重そうだし、衣装も裾にぴっしりとパールビーズらしきものが縫い付けられているので、踊りにくいと思うのですが、細い身体で軸のしっかりした踊りを踊ってらしたのでびっくり。初々しさと美しさとがあって、非常に魅力的だったと思います。
ハンガリーのメインは遠藤/奥田。私は奥田さんが踊るのを見るのが好きなんですよねー。別に特別好きなタイプのダンサーという訳ではないのだけど(ってゴメンね、奥田さん)、見ていて幸せになります。遠藤さんと2人とも気合いが入っていて、とてもよかったと思います。ただ衣装の色合いがねー(笑)。メインの2人は黄緑とゴールド系の組み合わせ/後ろの面々は緑とゴールド系の組み合わせなんですが、男性陣の黄緑のタイツはどうかと思うんですよね・・・衣装の素材1つ1つはゴージャスで素敵だったんですけど。マズルカは黄色とゴールド系の組み合わせ。たぶん高木裕次さんだと思うのですが、一緒に女性と踊り終わった時に、跪いて女性のスカートにそっとキスをする仕草が印象的でした。
黒鳥のパ・ド・ドゥはセルゲイエフ版。ザハロワもマトヴィエンコもお見事でした。アダージオでロートバルトが絡む従来通りのものでしたが、ロートバルトの市川さんがいつもより地味目の動きだった気がしました。ザハロワはヴァリエーションの時もロートバルトの方に視線を送っていたのですが、その時玉座にいたロートバルトはけっこう無反応だった気が(笑)。ザハロワのフェッテは全てシングルで、振り上げた脚の高さといい軸のぶれない回転といい本当に完璧。オデットとの演じ分けも自然でよかったと思います。
そうそう、王子が近づいた時には、後ろの方に控えている貴婦人や貴族の人たちは頭を下げるべきなんですが、それを忘れちゃってる人がいて「あれ?」って思っていたんですよね。後でキャスト表を確認したら、どうやら研修生の方だったみたい。ちょっと気になったので、明日は直っているといいのですが・・・
オディールを花嫁に迎えたいということになり、後ろの花嫁候補たちは愕然。ジークフリードは花束をオディールに渡し、ロートバルトに促され、彼女に愛を誓います。するとお城の窓に嘆くオデットの姿を見て、彼は自分の過ちに気付きます。オディールは花を投げつけて、ロートバルトと退場。ここでマトヴィはオディールたちの後を追って退場してしまいました。気がつくと舞台の上には王妃と王妃付きの貴婦人、そして道化しかおらず、王妃の嘆きを慰めるには人数が少ないよー、とちょっと淋しくなりました。みんなお着替えがあるので仕方ないとは思うんですけどね・・・
4幕。
黒鳥入りでした。この黒鳥たちの扱いですが、振付を見ていると、どうもこの版ではロートバルトの手先扱いっぽいですね。2羽の白鳥は川村さんと厚木さん。2人ともお気に入りのダンサーでとても美しかったですが、ここは川村さんが無敵のラインでした。本当にうっとりする程素晴らしかった。
えーと、ロートバルトと王子はあまり戦いません。羽をもぎ取る旧版の方がわかりやすかった気はするかなぁ。オデットとジークフリードの愛情の強さに負けて、ロートバルトがだんだん衰弱していくのですが、音楽の盛り上がりに甘えてしまった演出のようにも感じました。説得力のある「白鳥のエンディング」って難しいんですね(笑)。
この日の最大の不満は音楽。新国立劇場の「白鳥」はここのところずっと渡邊一正さんなのですが、彼は踊りに合わせようとしすぎてオケが追いて行けなくなってバラバラになるというパターンが多すぎます。特にこの日は本当に最悪。オケが悪いのか指揮が悪いのかは分かりませんが、リズムを刻む低音部隊のばらつきはひどかった。合うところはピシっと合って音楽も盛り上がるんですけど・・・よくみんな踊れたと思って感心しましたよ。
カーテンコールは3回くらいだったかな。マトヴィとザハロワが上下に分かれて新国立劇場の面々を讃えてくれたのは嬉しかったです。音楽のことはさておき、本当に美しい舞台を見たという満足感があり、幸せな気分で劇場を後にする事ができました。
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