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「ジゼル」第11回世界バレエフェスティバル 全幕特別プロ(2006.08.15)

キャスト

ジゼル:アリーナ・コジョカル
アルブレヒト:マニュエル・ルグリ
ヒラリオン:木村和夫
バチルド姫:浜野香織
公爵:後藤晴雄
ウィルフリード:森田雅順
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):小出領子‐古川和則、高村順子‐中島周、長谷川智佳子‐平野玲、佐伯知香‐大嶋正樹
ジゼルの友人(パ・ド・シス):大島由賀子、西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子
ミルタ:井脇幸江
ドゥ・ウィリ:小出領子、長谷川智佳子

クレジット

振付:レオニード・ラヴロフスキー/改定振付(パ・ド・ユイット):ウラジーミル・ワシーリエフ/音楽:アドルフ・アダン/美術・衣装:ニコラ・ベノワ
指揮:アレクサンドル・ソトニコフ/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
東京文化会館

感想

元々、東バの「ジゼル」は役者が揃っているので大好きなのですが、今回の公演は本当にどこをとっても見応えがあって本当に素晴らしい公演でした。感想、すごーく長くなってしまうと思いますがご勘弁を。

まずコジョカルのジゼルが素晴らしかった。彼女はロイヤルからゲストで来たダンサーとしては珍しく白にブルーの胴衣をつけていました(ロイヤルはピーター・ライト版のハズだから黄〜茶系じゃないのかな?)。そのブルーもちょっと起毛感のあるビロード風の地模様のある素材だった気がする。エプロンはしてなかった。サイドの髪を後ろでまとめたダウンスタイルで、そのまとめたところにわすれな草(っぽかった)を飾っているの。可憐〜!まず見た目でKOです。恋の高揚感とか幸せが全身を満たしているのにどこか薄幸そうだったり、ガラスのような壊れやすさを思わせるジゼル。外国人ダンサーとしては背が低いので東バのダンサーたちと並んでも「別の世界」感がありません。繊細でガラスのような少女ではあるけど、"どこから見てもご落胤"という感じではないんですね。

実を言うと、コジョカルの音楽の使い方(使わな方?)は好きではありません。もっと音楽に乗って踊ってくれーとA/Bプロでも思いましたし、ジゼルでもやはりそう思いました。でも、全幕だと、ジゼルだと、自分の中でその「許せなさ」加減が薄くなってしまうみたい。最初は「うーん、やっぱり好きじゃないかも」と思っていたのに、気付いたらすっかり感情移入して感激しまくりでした。それくらい、「コジョカルこそジゼルだ」と思える存在。ここまでジゼルらしいダンサーにはめったに出会えないのではないだろうか。役作りにおいても細部までよく考え練られているのがわかります。優れたダンサーは役を演じるのではなく、舞台でも自分自身であるべきだと聞いたことがありますが、この時のコジョカルもまさにそれでした。

かわいいなーと思ったのは、クーランド公やバチルド姫をお飲物でおもてなしする場面。ピッチャーからコップに飲み物を注ぐお手伝いをするジゼルはあまりいないような気がするんだけど、コジョカルはそのお手伝いをした上に、コップの底についた水滴を拭って(あれ?じゃあエプロン付けてたのかな??)から、公爵とバチルドに差し出すのよ。ベルタにきちんと育てられた娘なんだなーと妙に感心しちゃった。

アルブレヒトがバチルドの手にキスをするところでも、コジョカルは貴族に失礼な振る舞いをすることがない。「一体どういうことですか?あなたとこの人は一体?」とうろたえながらバチルドに聞いて、婚約者だと知って愕然とする(ここでそんなジゼルの頭越しに「ダメ、言わないで!」と唇に人差し指を当てて内緒のマイムをするアルブレヒトも相当残酷だけど、この話はもう少し後で)。私はここで「私だって彼と結婚の約束をしてるんです」とマイムをしないジゼルが好き。いわゆる狂乱の場では、あまりに強い悲しみのために涙で出来たカーテンの内側に籠ってしまったように見えました。それがまたこちらの涙を誘うのです。1幕が終わった時、既に脱力して席を立てない自分がおりました。

ルグリはヌレエフ系列の「お戯れ貴族系」アルブレヒト。映像で見るヌレエフほど性欲だらけではなく、もっと上品(笑)。1幕は茶系の上下。ウィルフリードに対する貴族しかりな態度が堂に入っているのがさすがです。お戯れではあるもののジゼルの前では彼も理想の恋人であろうとしますから、ガラスのようなジゼルを大切に扱ってスウィートな恋人たちでした。

身分がバレる場面、前述した「ジゼルの頭越しに『ダメ、言わないで!』と唇に人差し指を当てて内緒のマイムをするアルブレヒト」というのは初めて見ました。二股発覚の場面としてはあまりにひどい男だ。こんなことされたらバチルドはショックだよねぇ。この時のバチルド姫、浜野香織さんの演技も見事。大きな目を見開いて至近距離からルグリの顔を凝視して、自分のプライドを踏みにじられた怒りをあらわにしているの。高貴な人らしいプライドの高さの出し方が上手かった。

ルグリのアルブレヒトは、ジゼルが死んだ後「お前のせいだ」とヒラリオンにつっかかるも「違う、お前だ!」と言われてのブチ切れ方が激しかった。剣を拾って胸を開いたヒラリオンのところへ突進する勢いがすごくて、森田ウィルフリードががっしり止めていました。すごい迫力。その後、へたりこんだ彼をウィルフリードがしっかり立たせてマントを掛ける。あまりにもショックで、とにかく彼はその場から逃げ出したかったのね。一目散に走り去っての幕となりました。

木村さんのヒラリオンは、もうホントに至芸ですね。東バの宝だわ。1幕冒頭での、ジゼルの家を前に自分の恋心を表現する場面、ハンス(アルブレヒト)の正体を思い当たる場面、そしてその正体を暴くところ、ジゼルの亡骸を前に胸を開いてアルブレヒトの剣を受けようとするところ、もう本当にどれをとっても素晴らしい。ヒラリオンに感情移入する程に、その心の動き1つ1つが手に取るように分かる。今回は特に主役とのバランスもよく、出色の出来と言えるのではないでしょうか。

ペザントのパ・ド・ユイットは、今回も「どこを見たらいいのー」状態。特に男性陣は充実してます。クラシックの形が一番美しいのは中島さんなので、そちらに目が行ってしまうんですが、他の3人も好きだからじっくり見たかった・・・。パ・ド・ユイットは個々のダンサーをじっくり見るには不向きですが、東バが誇るソリスト陣が大挙登場するので、祝祭感たっぷり。幸せなひとときでした。友人たちのパ・ド・シスは、大島さんと西村さんに目が行きました。そういえば、東バの村人たちの踊りって、前からリーディングカップルがいましたっけ?今回高橋竜太さんと女性(ごめん名前がわからなかった)が踊っていたのですが、、、あとでヴィシニョーワとマラーホフのジゼルDVDで確認してみます。

うう、1幕のことも全部書ききった気がしないのにずいぶん長くなってしまいました。とりあえず2幕にかかりましょう・・・

2幕は、いつもの東バ「ジゼル」とはちょっと違う印象を持ちました。その理由の大きなところは井脇幸江さんのミルタの役作りだったと、今はわかります(井脇さんのサイトにあったコメントより)。井脇さんのミルタは普通、男性に対する憎しみとウィリという存在の哀しさとを感じさせ、それがジゼルの愛情を知って、自分の人間の頃の恋心を思い出した許容の気持ちを感じさせるラスト、という風に変化していくように見えます。それが今回はかなり早い段階から、ジゼルの存在に揺らぐので「強いミルタ」とは見えなくなるんですね。いつもと違う、でもしっかり調和してこちらの気持ちを捉えて離さない2幕でした。

ドゥ・ウィリは小出、長谷川の「キトリの友人」コンビ。長谷川さんはドゥ・ウィリ合ってますね!彼女の軽さが生きてました。小出さんも安定してたし、普段は小出さん贔屓な私ですが、今回は長谷川さんに目が行ってしまいましたよ。ウィリたちも、今回はあまり足音しなかったんじゃないでしょうか?私の席(1F8列)ではほとんど気になりませんでした。その辺も感動の一因かなー。細部まで気を配って舞台を作り上げている感じをひしひしと受けましたから。

さて、そんなウィリたちに捉えられたヒラリオン、木村さんは踊らされ苦しいながらもノーブル。あんなにひたむきにジゼルを愛したヒラリオンなのに、気の毒だよねー。こと木村ヒラリオンにはその気持ちが強いです。しかし、ヒラリオンには井脇ミルタも冷酷です。この2人の当たり役対決を見るのも楽しみの1つ。

さて、ジゼルですが・・・。まず登場のところ、たぶん予定より少しだけ早く、コジョカルはお墓の上に登場してしまったと思います。スモークが後から炊かれてたし。でも、そんなことはとるに足らないこと。登場してすぐの回転は、例えばザハロワやヴィシニョーワの早い回転を見れば「あれこそが"この世のものならざる存在"を示しているのね」と思うわけですが、コジョカルはそこまで鮮やかな軌跡を描く訳ではありません。でも技術的に不足があるわけではないから、綺麗な印象を残すんですね。彼女の踊りはゆっくりめだったので、音楽がそれに合わせていてかなり「じっくり」とした登場シーンでした。

アルブレヒトの登場、百合を抱えたルグリは美しかったですー。ああルグリのジゼル全幕を見てるのだわーと改めて感激しちゃいました。最後までジゼルと目を合わせないマラーホフと違って、ルグリとコジョカルのペアは最初からジゼルの存在がかなりはっきりわかるように見えました。コジョカルのジゼルが「自分はここにいる」いう念をアルブレヒトに送っているのかもしれませんね。

1幕でも感じましたが、この2人、さすがに踊りがぴったりとはいきません。なにしろルグリは音楽の使い方がとても上手いし、コジョカルは前述の通りだし。で、2幕で2人が左右から交差してジャンプして着地を3回繰り返すところがありますよね?(相変わらずバレエ用語知らずですみません)あそこも、最初の2回は着地が全く合ってなかったんです。それが3回目はぴったり合った。ルグリが合わせたんだと思いますが、あれはサスガだと思いました。その後、別の場面でも「ぴったり合った!」と思ったところがあったので、ルグリは相当心を砕いて踊っていたのではないでしょうか。超高速のプリゼといい高いアントルシャ・シスといいヴァリエーションも本当に見事でした。

コジョカルの踊りはひたすら軽く、やはり2幕でもジゼルそのものでした。ただ、彼女の役作りは無二のもので、あのようなジゼルは初めて見た気がします。アルブレヒトと踊っている時は浄化された恋の続きをしているようにうっすらと幸せそう。軽やかで温かな存在感でアルブレヒトを包む一方で、この人を守り抜くという強さも持っている。そして、夜明けを告げる鐘の音を聞いた時にも、愛する人を守り抜いた喜びと同じ位(もしかしたらそれよりも強く)、これが永久の別れだという悲しみの表情も見せるんですよね。この嬉しいけど淋しいというコジョカルの表情を見た時に、もう涙腺が壊れてしまいました。理屈じゃなく、心の深いところを直接打ち抜かれた感じ。

朝露に消える前、ジゼルがアルブレヒトに小さな花を1輪手渡します。それは、2人で恋占いをしたあの小さな花。私を忘れないでと言っているかのような、その小さな伝言に胸がつぶれそうになりました。ゴージャスな百合の花たちの前では、まるで貴族たちの中にいるジゼルのようでもあります。アルブレヒトは百合の花を抱きかかえますが、最後にはその小さな花だけを手にして、高く掲げるのです。

深く深く、胸にしみ込む舞台でした。カーテンコールはいつまでも続き、最後は客席もほぼオールスタンディング。最初は物語の世界から抜けきれないダンサーたちが、熱狂的な拍手の熱で、だんだんとこちら側に戻って笑顔になってくれるのも嬉しいものです。ああ、本当に珠玉の舞台でした。

Comments:2

ともりーな 2006年8月24日 19:27

本当にルグリ&コジョカルの「ジゼル」はよかったですね。なかなかあそこまで感動できる舞台はそう沢山はないと思います。NHKでの放映が確実なようですので、今からそれが楽しみで・・・・・。


勝手ながらブログをリンクさせて頂きました。支障があるようでしたらご連絡くださいね。

ゆう 2006年8月25日 20:24

ともりーなさま、初めまして。コメントありがとうございました。

本当によい舞台でしたよね。私もテレビ放映が楽しみです。12月頃かも?なんて話を教えてもらいましたが、待ちきれませんね(^^)

リンクをはってくださって、ありがとうございます。私もともりーなさんのblog、今じっくりと拝見させていただいています。こちらからもリンクさせて戴いてよいのかしら?あとでお伺いに参りますね。

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