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第11回世界バレエフェスティバル Aプロ(2006.08.06)

クレジット

指揮:アレクサンドル・ソトニコフ/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団/ピアノ:高岸浩子
東京文化会館

第1部

「ラ・ファヴォリータ」

振付:ペタル・ミラー=アッシュモール、音楽:ガエターノ・ドニゼッティ
ルシンダ・ダン/マシュー・ローレンス(オーストラリア・バレエ)

初見の2人による初見のバレエ。といっても、ルシンダ・ダンは熊川哲也がローザンヌで金賞を取った時にエスポワール賞を受賞したダンサーなので、その時の映像は見ています。作品はオーストラリアの男女とも二百年祭を祝うために作られた作品だそう。スペインというかドンキ風とも言える衣装で、クラシックのテクニックを少し見せかたを変えてみました、という感じ。祝祭感があってAプロのオープニングにふさわしいと思いました。面白かったのは男女が同じアクセントをつけながらマネージュしたところかな。2人とも、脚の筋肉のつきかたがすごかった。

「7月3日 新しい日、新しい人生」 −世界初演−

振付:ジェレミー・ベランガール、音楽:エイフェックス・ツイン
ニコラ・ル・リッシュ(パリ・オペラ座バレエ)

んーと、作品の意味するところを考えるのは早々に諦めて、ニコラの肉体鑑賞をしていました(笑)。サポートする相手もいなければパの出来不出来も関係がないとくれば、目の前で動くダンサーをじっくり観察するのにこれ以上適した場面はありますまい。ニコラが舞台の一番手前まで出て来た時に、生で見ることは適わなかったジョルジュ・ドンを連想してしまいました。何でだろう?身体のシルエットとかポージングとか、ぼさぼさの髪とか?急にそういう考えがポンと目の前に飛び出して来たんですよね。そういう目で見ると、そこからしばらくの間の動きはベジャール(というかボレロ?)を連想させるようでもあり。ベランガールの振付と構成はあれでいいの?踊れて満足しているの?とカーテンコールで笑顔になったニコラに聞いてみたい。

「白雪姫」

振付:リカルド・クエ、音楽:エミリオ・アラゴン
タマラ・ロホ(英ロイヤル・バレエ)/イナキ・ウルレザーガ(オランダ国立バレエ)

タマラ・ロホが初演したスペイン産のオリジナル・バレエより、王子との愛の勝利を表したパ・ド・ドゥとのこと。ハッピーエンドのグラン・パだったので「白雪姫」と言われてもピンと来なかった部分はありますが。曲も一部プロコフィエフのシンデレラを思わせるような部分があったりしたかな。ロホはカレーニョ相手よりウルレザーガにサポートしてもらう方が生き生きと踊っていたみたい。ロイヤルにいた頃からよく組んでいたんでしょうかね、踊りの質が似ているというとちょっと語弊があるかもしれないけど、安心して見ていられました。白系にゴールドの刺繍の入ったチュチュのロホ、ベージュと茶の中間位の色合いの衣装のイナキ。前回のフェスではもう2度と見なくていいと思ったイナキが、ちゃんと王子だった!のにびっくり〜。それどころか、ロホより輝いてた位かも。前回からこれくらいやってくれたら、人のよさそうな笑顔もあることだし、普通にファンを獲得できたんじゃないだろうか。ロホのフェッテはすごかったですね。一体何回転回ったんだろう。

「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:フレデリック・ショパン
ジョエル・ブーローニュ/アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ)

輪郭のはっきりしたルグリとルディエールが記憶に焼き付いているので受け入れられなかったらどうしようかと見る前は不安でしたが、もちろん杞憂。リアブコのアルマンには、自分の激情をそのままマルグリットにぶつけるもどかしさ、傲慢さがあって。ブーローニュのマルグリットはそんなアルマンがぶつける想いを、自分の壊れゆく身体で受け止める。踊りじゃなく演技じゃなく、マルグリットとアルマンとしてそこに存在していました。ガラではなくそこまで全幕で見ていたかのようなドラマ。Aプロ最初のハイライトでした。ブラボー。

第2部

「ロミオとジュリエット」より "バルコニーのパ・ド・ドゥ"

振付:ジョン・クランコ、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ポリーナ・セミオノワ(ベルリン国立バレエ)/フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ)

幕があいてバルコニーに恋するジュリエットが登場した瞬間に泣きたくなりました。お気に入りのダンサーたちがペアで登場し、しかも私にとっては久しぶりのセミオノワ。彼女の踊りはどこをとっても好みなので言うことがあるハズもありませんが、加えてこの初恋にうち震える少女の表情はどうだろう、と。一体どこまで極めていくのでしょうか、ポリーナは。ずっと見続けていきたいダンサーです。

フォーゲルは去年の秋に初めてのロミオを見ていますが、若さの勢いはそのままに、踊りもサポートも格段によくなっていました。マラーホフの指導かな?前回はちょっと固いと思った背中が柔らかくしなって、これぞクランコ版ロミオ(というか、私のクランコ版ロミオのデフォがマラーホフなだけですけども)。その背中のしなりこそがロミオの恋心を物語るところだと信じて疑わない私には、大満足のロミオに成長していました。このペアもようやく日本で見られた!という感じですが、相性がいいのねー。それぞれに旬の輝きがあって眩しいほどに甘酸っぱい恋人たちでした。最後の懸垂チューがなかったのは残念(笑)。

「エスメラルダ」

振付:マリウス・プティパ、音楽:チェーザレ・プーニ
レティシア・オリヴェイラ(ヒューストン・バレエ)/ズデネク・コンヴァリーナ(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)

初登場組。このペアもすごい筋肉質の脚だったなー。オリヴェイラは「ベテランが嫌みにならない程度に技のアピール」をしてるのかと思ったら、まだ20代後半だった(笑)。せっかくだから、もっとバリバリにアピールしてみても面白かったかも。コンヴァリーナの方も、この演目ではあまり個性とか彼のよさは発揮できなかったのではないかしら。よく上演される演目だし、このバレエフェスみたいなラインナップではよほどのことじゃないと印象に残りにくいかも。

「オネーギン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・クランコ、音楽:P.I. チャイコフスキー、編曲:シュトルツェ
アリーナ・コジョカル(英ロイヤル・バレエ)/フィリップ・バランキエヴィッチ(シュトゥットガルト・バレエ)

怪我で不参加のアイシュヴァルトに代わってピンチヒッターのコジョカル@タチアナ。恋に恋するようなタチアナのロマンティックな面が、コジョカルのスィートな持ち味とあいまって素敵だった。バランキエヴィッチとの急造ペアであのアクロバティックなリフトの数々を見事に踊ってみせたのも立派。バランキエヴィッチも、タチアナの夢の中に出てくるオネーギンとしてスィートでした。ただ、、、他のドラマティック・バレエのように「今まで全幕を見てきた続きのような」パ・ド・ドゥではなかったかなぁ。鏡のパ・ド・ドゥはそれ自体がユニークだから無理もないのかなー。

「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"

振付:ジョージ・バランシン、音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
アニエス・ルテステュ/ジョゼ・マルティネス(パリ・オペラ座バレエ)

ゴージャスでした。でも、、、この2人ならもっとゴージャスにできたのでは?という気も。ルテステュの調子があまりよくなかったんじゃないかな。踊りに流麗さがなかった気がする。しかし、それでも見応えのある華やかな舞台を見せてくれるのは彼らならでは。ホントに自分たちに合う演目を熟知している2人。久しぶりに踊りを見られて嬉しゅうございましたわ。

「白鳥の湖」より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"

振付:マリウス・プティパ、音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
イリーナ・ドヴォロヴェンコ/ホセ・カレーニョ(アメリカン・バレエ・シアター)

ABTらしい、わかりやすいパ・ド・ドゥ。イリーナも久しぶりに見られて嬉しかったダンサーの1人です。以前オデットを見てぶっとぶ程感激したので、オディールも楽しみでした。イリーナったらロシアンな持ち味そのままにABTの単純明快さをも身につけてしまったのね。オディールだからかしら。相手がマックスだったら、また違ったかもしれないけど。衣装とティアラの真ん中のルビー(に準じたもの)が綺麗に光っていました。フェッテは全部シングルだったけど、ほとんど位置が変わらなくて(のように見えた)スピードも速く、上げた脚の位置も高くて美技でした。ホセの王子は安心して見てられます。でも、今回はイリーナばかり目で追ってしまったので、、、ごめんね、ホセ。

第3部

「扉は必ず・・・」

振付:イリ・キリアン、音楽:ダーク・ハウブリッヒ(クープランに基づく)
オレリー・デュポン/マニュエル・ルグリ(パリ・オペラ座バレエ)

先に見たみなさんの評判が高かったので楽しみにしていました。フラゴナールの絵の世界と、キリアンお得意のコスチュームプレイと、ダンサーの絶妙さを大いに堪能。倦怠感に溢れた情事後らしき2人の、帰りたい帰さないのやりとりとかんぬきの抜き差しがシンクロするところがユーモラス。それがいつしか2人の関係の駆け引きになって、最後は1つの林檎を分け合う2人。林檎、というところがまた思わせぶり。カーテンコールもお茶目でキュートで、最初から最後まで大満足。

「眠れる森の美女」

振付:マリウス・プティパ、音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
マイヤ・マッカテリ(コロラド・バレエ)/デヴィッド・マッカテリ(英ロイヤル・バレエ)

マッカテリ兄妹。バレエフェスに持ってくるには地味な演目地味なダンサーという評判でしたが、まぁ確かにね・・・でも、マイヤちゃん可愛かったわ。グルジア出身のせいか、ニーナを思わせる(といっても規模は小さい)陽のキャラだと思いました。どんな時もつま先が高くあがって綺麗だったとも思うし。ただ、兄ちゃんとのペアはそんなに上手くいってなかったような気も。

「コンティニュウム」

振付:クリストファー・ウィールドン、音楽:ジェルジ・リゲティ
ルシンダ・ダン/マシュー・ローレンス(オーストラリア・バレエ)

ウィールドンのコンテ。ウィールドンの作品はもう少し背の高いダンサーで見る方が面白いような気はするんだけど、この2人の筋肉質な脚は別の意味で存在感があって、それはそれで意外に面白く見られました。嫌いじゃないけど、長過ぎるガラの中では一番集中力が途切れていたかも・・・

「ライモンダ」

振付:マリウス・プティパ/ユーリー・グリゴローヴィチ、音楽:アレクサンドル・グラズノフ
ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・メルクーリエフ(ボリショイ・バレエ)

お帰りステパネンコ!という感じ(笑)。また「ライモンダ」かと思いながらも、やっぱり彼女の「ライモンダ」は飽きないし、見るたび夢中にさせてくれます。以前見たときよりも踊りがまろやかになったような気がするのは私の刷り込みのせいかしら。メルクリエフは、キーロフの「シンデレラ」で見た時はブロンドだった気がするけど、今回は淡い栗色ヘアだった。そして長マント。がっしりしっかりステパ姐をサポートして、マネージュも真骨頂という感じだったし、思っていたより押し出しが強いジャンになっておりました。Bプロのカルメン、期待できそうです。メルクリも見ると幸せを感じるダンサーだなぁ。

「春の声」

振付:フレデリック・アシュトン、音楽:ヨハン・シュトラウス
アリーナ・コジョカル/ヨハン・コボー(英ロイヤル・バレエ)

コジョカルかわいい!なんとさわやかで愛らしいのでしょう。花ふぶきを散らしながら登場するところなんて春の精って感じだったもの。映像でパークとイーグリングがオペラの舞台で踊ったのを見ていますが、それよりずっとずっとよかったです。コボーとのやりとりも微笑ましかったし、アシュトンの細かい振りを自在に踊るところもさすが。コボーはほとんど運び屋さんになっていましたが、以前都さんとの「ジゼル」で見た時より若返ったかも。コジョカルパワー恐るべし。いいカップルだわ。

第4部

「カルメン」

振付:ローラン・プティ、音楽:ジョルジュ・ビゼー
アレッサンドラ・フェリ(アメリカン・バレエ・シアター、ミラノ・スカラ座バレエ)/ロバート・テューズリー

フェリの「カルメン」をホントにこのフェスで見られるとは。私はフェリのカルメンを生で見るのは初めてなんです。なので言いようもなく感激しました。同時に、きっとこれが最後でもあるんだろうなという哀しさも味わいましたが・・・。先だって新国「こうもり」で見た時も思いましたが、フェリがプティ作品を踊る時の腕や脚のポジションはジジ・ジャンメールのそれと見事に同じポジションで(それってプティの意図そのものってことよね)かつ、フェリだけが持つ情感や官能性があるのが素晴らしい。あの官能的な足の甲が、鮮やかな手脚の軌跡が、私の記憶に鮮烈に焼き付きました。テューズリーは、全く目に入らなかったよ・・・ごめん。

「TWO」

振付:ラッセル・マリファント、音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム(英ロイヤル・バレエ)

バレエ・ボーイズとの公演に行けなかった私には初見の演目。いやー面白かった。真上から照らされた、四角く区切られたスポットライト。その中で最初はゆっくりとした動きで徐々に早く激しく動くギエム。その踊りは東洋の武術のようでもあり、ちょっとしたトランス状態をもたらすようでもあり。途中気付いたのは、ギエムが立つ内側の四角は薄暗いスポットで、その外側に一際明るいライトの枠が出来ていたこと(最初はその外側の明るい枠はなかったのかしら?よくわからない)。その部分をギエムの手や足が通ると、彼女の明るく照らされたパーツを強調すると共にその軌跡の残像が見える感じ。これはもう1度見たい。ギエムはこうして日本の観客まで育てちゃうのね。恐るべし。

「ベジャールさんとの出会い」−世界初演−

振付:モーリス・ベジャール、音楽:グルック/ショパン/アルゼンチン・タンゴ/アンリ
ジル・ロマン(ベジャール・バレエ)
(那須野圭右、長瀬直義)

ベジャール自身が初演した「オルフェ」「ハムレット」「ファウスト」「孤独な男のためのシンフォニー」をモチーフにした作品。これはオリジナルを知っていればとても面白い作品なのだと思う。私は「孤独な男・・・」しか映像の記憶がなく、だからあの綱が降りてくるところだけは何となく電気がついたんだけど。作品や意味するところはほとんどわからなかったにせよ、ジル・ロマンの肉体が表現する世界には引きずりこまれました。初演のベジャールの気難しさでもなく、若い頃のロマンの清々しさでもなく(映像で知った世界ですが)、瑞々しさと円熟味の同居する彼にしかない存在感!ああ、今の彼のアダージェットが見られないなんて(号泣)。

「マノン」より "沼地のパ・ド・ドゥ"

振付:ケネス・マクミラン、音楽:ジュール・マスネ
ディアナ・ヴィシニョーワ(マリインスキー・バレエ)/ウラジーミル・マラーホフ(ベルリン国立バレエ)

出てきた瞬間、彼らも全幕を演じ続けてきたかのようだったし、私もニューオーリンズの沼地まで彼らと旅をしてきたような錯覚に陥りました。憔悴しきったマラーホフの表情、あんな風に出てくるなんて・・・今思い返しても目がうるんできます。ヴィシニョーワもやつれていたけれど、その目が無垢なほどに澄んでいたのが印象的。マノンの命の火は消えようとしているけれど、彼女は本当の愛を知って今幸せなのだと思えました。見る前は、ヴィシだから瀕死といっても生命のきらめきは押さえつけられないかもと思っていたのですが、その生命感あふれるところを踊りのダイナミックさだけに使う上手さに舌を巻きました。何か、ものすごいものを見てしまった気がする。この場面を見て、以前見た彼らの寝室のパ・ド・ドゥまでがストンと自分の心に落ちたようでした。

他の「マノン」沼地でデ・グリューがどんな衣装だったかはあまり記憶にないのですが、床に寝転んだ時のマー君はおへそを含む神々しい腹筋がチラ見え(笑)。そこがまた美しくて(いや、やつれていてもマラーホフは美しかったが)、何かイケないものを見てしまったような背徳感まで味わってしまいました〜。

「ドン・キホーテ」

振付:マリウス・プティパ、音楽:レオン・ミンクス
ヴィエングセイ・ヴァルデス/ロメル・フロメタ(キューバ国立バレエ)

あはは〜!と笑ってしまいたくなるような、噂通りものすごいドンキでした。何ですか、あの2人は(笑)。ヴァアルデスのバランスは最強ですね。ロホ、負けてますよ〜。フロメタの片手リフトのまますたすた歩いて行くところもすごすぎでした。私はいくらお祭りでもあまり大技の誇示ばかりされるのは好きじゃないのですが、やるならここまでやってくれると却って爽快かも。ここまでの技自慢をされてしまうとホント笑うしかないものですねぇ。私の隣の席にいたミセスはほとんどずっと手を叩きっぱなしでした(笑)。好き嫌いは別として、後々まで語り継がれそうな「笑っちゃうくらいのドンキ」を目撃したことは確かのようです。それに、前回のバレエフェスの某ペアのように不完全燃焼ドンキで幕切れとなるより、こっちの方がずっと後味がよかったし。


フィナーレはいつも通り女性のアルファベット順に登場。男女男女の交互に並ぶとルテステュの両脇はジョゼとマッカテリ(確か)で高身長ゾーンになるのですが、女性だけが前に出ると、両脇がロホとマッカテリ妹だったか?出演者の中でも小柄なダンサーでルテステュと別の生き物みたいでしたよ。しかしすごい数の出演者ですね・・・舞台に並びきらないみたいでしたよ。どこを見たらいいのかわからない位でした。

Stage Hunt Home > ガラ/企画公演 など > 第11回世界バレエフェスティバル Aプロ(2006.08.06)

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