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「こうもり」新国立劇場バレエ(2006/05/21)

クレジット

振付:ローラン・プティ/音楽:ヨハン・シュトラウスII世/舞台美術:ジャン=ミッシェル・ウィルモット/衣装:ルイザ・スピナテッリ/照明:マリオン・ユーレェット、パトリス・ルシュヴァリエ/舞台美術・照明補佐:ジャン=ミッシェル・デジレ/振付指導:ルイジ・ボニーノ

指揮:指揮:デヴィッド・ガルフォース/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場オペラ劇場

キャスト

ベラ:アレッサンドラ・フェリ
ヨハン:ロバート・テューズリー
ウルリック:小嶋直也
メイド:楠本郁子
グランカフェのギャルソン:マイレン・トレウバエフ、奥田慎也、江本拓
フレンチカンカンの踊り子:厚木三杏、寺島ひろみ、西川貴子
チャルダッシュ:マイレン・トレウバエフ、遠藤睦子、西山裕子、川村真樹、寺島まゆみ、本島美和、丸尾孝子
警察署長:ゲンナーディ・イリイン
ヨハン(歌):樋口達哉

感想

子だくさんで生活は恵まれているものの、夫の愛情が足りないと嘆くマダム。フェリはそんなベラの境遇をユーモアで包んで、見事なコメディエンヌっぷりを見せてくれました。子どもたちはやんちゃざかりで目が離せないけどかわいくて仕方ないというその表情は、暖かい愛情に満ちた母の顔。それに、見てる時は気付かなかったのだけど、帰りに舞台のことを思い返していたら、フェリのベラって最初から最後まで夫への深い愛が一本ピーンと通っていたんだなーとしみじみ思いました。謎の美女に変身してヨハンを誘惑していても、その内側にあるヒリつくような夫への愛や女心が見え隠れしていた気がして、ホントにかわいいベラだった。

そこまで愛される存在であるヨハン役のテューズリーは黒髪にヒゲで登場。あ、かっこいいぞ(笑)。この人の「自分プロデュース力(外見的に)」は秀でてるなーといつも感心するのですが(もちろん元々美男子だけど、アブデラクマンもセクシーでよかったもんね)、今回もその点期待を裏切りませんでした。役柄的にも、伊達男成分不足ながらも、愛すべきヨハンだったのでとても満足です。ウルリックがベラに色目を使った時の嫉妬っぷりといい、さあ夜遊びだ!という浮き浮きの表情といい、羽を切られてがっかり落ち込んでいる様子といい、なんと表情豊かなヨハン!こんな風に演じられるのねー。

今までの舞台や映像で見たヨハンは「家庭はイヤ、外で遊びたい」という大人になれない亭主(しかもあまり感情が表に出ない?)というイメージがあって好きになれなかったんだよね。最後に反省しても懲りずにすぐ遊びに行きそうだったり、一気につまらない亭主になりそうだったり、とにかくあまり魅力的な人間に見えなかった。ごひいき山本さんが演じても、そうだった訳です(笑)。今回はもしかしたらプティの作りたかった「こうもり」とは少し離れているかもしれないけど、ヨハンもかわいい男じゃん、とようやく思えた(笑)。でもテューズリーのヨハンもしばらくするとまた遊びの虫がうずきそうなタイプではあるなぁ。

一番好きな場面は、電話で呼び出されて駆けつけたウルリックがベラを元気づけていくところ。がっくり肩を落としてさめざめと泣くベラに「泣いちゃダメだよ、さあ笑って!」と元気づけるウルリック(このマイムは羽を切り取られてがっくり帰宅するヨハンにベラが繰り返すのも面白い)。なんかプティと小嶋さんにこちらまで元気づけられたような気がしちゃった。笑顔をつくって手に手をとって踊る、を繰り返すうちに少し自信を取り戻すベラ。変身して黒髪に真っ赤な紅をさしてビスチェ姿で登場するフェリは素敵!

この場面の成功の要因は、もちろん小嶋さんの存在が一番の鍵。彼のウルリックは自分のベラへの恋のことよりもベラの幸せだけを願う暖かい存在。夫婦円満になることによって彼の恋に成就の目はなくなるのに、悲哀よりも「よし、これで彼女は大丈夫」という満足感というか、、、とにかく器の大きな、包み込むような存在感でした。今回の「こうもり」を見て、鈍感な私はようやく「そっか、プティはウルリックの心情が描きたかったのかも」と思い当たったのですが、小嶋さんのウルリックは見事にその役割を果たしていたと思います。素晴らしかった。

踊りの面でも本当に満足。美しいつま先も切れのある踊りも見事だったし、ああ何ていいダンサーなんだろう、と見られて幸せな気持ちでした。ヨハンを踊るところも見てみたいぞと欲張りな考えを起こすほど(笑)。ご自身の体のことなど熟考された上でのバレエマスター業なのでしょうが、こうして踊ることで観客に幸せを与えられる人なのだから、もう少し踊ってくださったらいいのになー。

他のキャストでは、何といってもトレウバエフくん。ギャルソンもチャルダッシュも生き生きと表情豊かで楽しかったです。いやーいいねっ!大満足。ギャルソンはバリノフくんが怪我で降板し(泣)、奥田慎也さんが入っていました。彼、最近ずっとあまり踊らない役ばかりだったのでお怪我なのかなーと心配していました。今回も代役に入るまでは囚人役のみだったようですし。前回見た時は3人のギャルソンがビシバシ踊ったような印象があったのですが、今回はトレウバエフくんがメインだったような。でも奥田さんは、奥に立っている時の演技もいいんだよねー。気のいいギャルソンという感じで楽しかったです。

フレンチカンカンはちょっとあっさりめ娘たち。厚木・寺島(ひ)/西川のトリオだと色気担当がいない(笑)。大森さんの不在が淋しかったな。あとはですね、深沢祥子さんがとても目につきました。冒頭の青いロングドレスも彼女だったんだけど、元々華やかな美女だから目をひくところを、顔のつけかたが絶妙でねー。ウィンナワルツでも彼女は一人飛び抜けて素敵だった。私は社交ダンスは全くわからなけど、男性に腰を預けてターンする時と上半身が少し反るじゃないですか。その時に絶妙な角度で顔を上に向けて艶やかに微笑むの。ワルツを踊る人たちの中で、彼女だけが舞踏会で踊っている空気だったと思うよ。いやー素敵。私が男ならダンスを申し込みたい(笑)。他の方たちも、ただステップをこなすだけじゃなくて「舞踏会で踊って」ほしいものです。

さて、来週の日本人キャストも楽しみですー。

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管理人:ゆう

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