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「マラーホフの贈り物」Bプログラム(2004/05/07)

東京文化会館

第1部

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」

振付:振付:ジョージ・バランシーン/音楽:P.I.チャイコフスキー

ポリーナ・セミオノワ/アンドレイ・メルクーリエフ

メルクーリエフがよかったです!爽やかで動きも音楽的だったし、サポートもよかったと思います。メルクーリエフに合っている演目に思えました。いやー、かなりお気に入りのダンサーになりつつあります。

セミオノワは少しもったり(よく言えば丁寧、か?)してたかな。手脚が長いから細かい動きはこれからのお楽しみかもしれませんね。見るたび変わっていくのだろうと思います。音について行く印象で音楽と戯れる軽い感じが出てませんでしたが、メルクリエフもヴァリアシオン以降はそんな印象。この2人の組み合わせはきらきらした爽やかさががあるので、うまくハマったらすごそう。

「ラクリモーサ」

振付:エドワード・スターリー/音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト

ライナー・クレンシュテッター

やっぱり美しい作品だと思います。クレンシュテッターくんはAプロで見たときより踊りがよくなっていたように思いました。いや、前が悪かったとは思わないのですけれども。後は深みがほしい・・・かな。見た直後はよいと思ったのですが、(今もよいと思ってはいるものの)「罪ある人が裁かれるために灰からよみがえるその日こそ、涙の日」というこの作品にあるべき畏怖の感情が見当たらなかったような気がして。また何年かして彼がこの作品を踊るのを見たら、きっと違うものが見えるんじゃないかなぁ。

「アヴェ・マリア」

振付:ドワイト・ローデン/音楽:ジュリオ・カッチーニ

サンドラ・ブラウン/デズモンド・リチャードソン

改めてじっくりと堪能しました。2人のダイナミックな動きが印象に残っていたけれど、2度目に見てみるとかなり繊細な動きも多くて、その身体能力の高さに改めて舌を巻きつつ。アダムとイヴがリンゴをかじる前みたいな、自分と自分のろっ骨からつくられた他者の、ものすごくプリミティブな関係、という感じかな。いやはや、ひたすらスゴかったです。この2人には本当に楽しませてもらいました。ありがとう〜。

「マノン」より寝室のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ

ディアナ・ヴィシニョーワ/ウラジーミル・マラーホフ

世界バレエフェスの時はあまりよく見えない席だったし、マラーホフもあまり調子がいいようには見えなかったので、ようやく今回よいものが見られた!と嬉しくなりました。ヴィシニョーワ、ジゼルよりジュリエットよりマノンがよいよねー。特に寝室のパ・ド・ドゥは、後先考えずムッシューGMのお金を持って逃げてきた2人がただ愛情だけに生きるところだから、かなぁ。2人とも都合の悪いことは頭から抜け落ちて一緒にいられて嬉しいという気持ちだけ、そういう高揚感があって、刹那的だけどとても美しいパ・ド・ドゥでした。

ヴィシニョーワのマクミランもこなれて美しくなったと思うし、何よりあの背中のしなりがすばらしい。マラーホフのデ・グリューも素敵。熱烈にひたすらにマノンを愛する若く激情家のデ・グリューでした。マノンがペンを取り上げて投げ捨てた時、そのペンの行き先を厳しい顔して目で追っていたのが印象的。あー、全幕で見たいなぁ。

「ライモンダ」よりパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ

ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・ウヴァーロフ

開演ギリギリに滑り込んだせいでプログラムのチェックもしていなくて、「ラ・バヤデール」から「ライモンダ」に変更になったと知ったのは、この音楽が始まってからでした。とほほ。いや、まぁ好きだからいいんですが。今日はアダージオでのステパネンコのうっとりとした表情に釘付けでした。ヴァリアシオンもコーダも魅せまくり。いいなーホント。ウヴァーロフもよかったと思います。が、今日は少し騎士っぽさが足りなかったかも。ま、いっか、かわいいから。

第2部

「アポロ」

振付:ジョージ・バランシーン/音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

ウラジーミル・マラーホフ
ディアナ・ヴィシニョーワ/ポリーナ・セミオノワ/コリーヌ・ヴェルデイユ

これも生で見たのは初めてでした。アポロというのは太陽神のことかと思っていましたが、プログラムによれば「若き音楽の神」なのだそうですね。マラーホフはいつも通り音楽的でやわらかな動きで、音楽の神なら納得なお姿でした。コリーヌ・ヴェルデイユは安定感があるというか大きなハズレはない人かも。セミオノワはまだまだこれからですねー。かわいいけど、バランシンはまだこれからだね、というのがA・Bプロ両方見ての感想。仮面を床に置いて踊り始めるところは、そっと置いたほうがいいように思ったし、それ以外のところも雑な印象がありました。ヴィシニョーワにはひたすら感嘆。ポーズの1つ1つが美しくて動きが音楽的で、すごくよかったです。

第3部

「黄金時代」よりタンゴ

振付:ユーリー・グリゴローヴィチ/音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ

ガリーナ・ステパネンコ/アンドレイ・ウヴァーロフ

えーと、これはかなり楽しみにしていました。「黄金時代」って名前しか聞いたことがないものだったし、そういうプログラムを一部抜粋とはいえ日本で見られるのは嬉しいぞ、と。ステパネンコは黒鳥をセクシーかつモダンにしたような(チュチュじゃなかったけど)衣装でした。ウヴァーロフはなぜか黒のTシャツ。いちおうタキシードのズボンにカマーベルトはしていたのですが、これってそういうもの?なんか不思議な感じでした。

作品自体のものめずらしさがあったので面白く見られました。が、ショーダンス(の場面ですよね?)としては2人ともアピール不足かも。カーテンコールでおどけてみせたウヴァーロフのちゃめっ気が、もっと踊りの中で出てもよかったのではないかしら?なんて思ったのですが、それって邪道かしらねぇ。最初の方に、ウヴァーロフの体を駆け上がってリフトされるステパネンコ、というおもしろい振りがあったのが印象的でした。

「アダージョ」

振付:アレックス・ミロシュニンチェンコ/音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ

アンドレイ・メルクーリエフ

メルクーリエフのために振り付けられた作品ということで、ダンサーにとっては「自分のための作品」を持つというのは意味深いことだろうなーと思って幕が上がるのを待っておりました。さすがに自分の作品だけあって、こなれた踊りでした。照明のもとではシルバーのスラックスとゴールド系のTシャツを着てるように見えましたが、フィナーレでよく見たら、うすいブルー(とラベンダーの間のような微妙な色合い)のスラックスと同じ色合いのメッシュらしきTシャツ。ゴールド系に見えたのは、ラメ系の糸が織り込んであるのかも。

振付としてはあまり面白みはありませんでしたが、ガラ公演でいろんな魅力を見せるという意味ではメルクーリエフは成功したのではないかしら。

「パリの炎」

振付:ワシリー・ワイノーネン/音楽:ボリス・アサフィエフ

コリーヌ・ヴェルデイユ/ライナー・クレンシュテッター

全く期待してなかったのですが(ゴメンね)楽しませてくれました。ガラ向きですよね。ヴェルデイユはここでも安定感があってそこそこテクもあって器用なんでしょうね。ちょっと地味かとは思いますが、ソリストとしては重宝なタイプなんだろうなーという印象がすっかりできあがってしまいました。クレンシュテッターは若さがはじけてました。Aプロの奴隷のパ・ド・ドゥよりこちらの方が、2人とも楽しそうに踊ってましたし、コーダの回転で1/4ずつ多く回るのを2人とも入れたりと、見てる方も楽しめました。

「レイトリー」

振付:ドワイト・ローデン/音楽:スティーヴィー・ワンダー

サンドラ・ブラウン/デズモンド・リチャードソン

「アヴェ・マリア」がアダムとイヴの物語なら、こっちは現代の男女の物語という風情でした。前者では性別を超えた個体という感じだったサンドラ・ブラウンが、こちらでは柔らかさと母性を加えた女性像でとても印象的。リチャードソンも原始的な野性だったアダムから、力強さはそのままに洗練された物腰が加わってとても素敵でした。もう1回位見てみたかったかも。

「コート」

振付:デヴィッド・パーソンズ/音楽:ロバート・フリップ

ウラジーミル・マラーホフ

これも初めて。ようやく自分の目で見られると思うと嬉しくて。この前に踊ったリチャードソンとブラウンのカーテンコールの間、カーテンの向こう側でフラッシュが何度も繰り返し光っていて何となく緊張してしまいました。

なるほどこういう作品だったのか、と最初はちょっと驚いたのですが、見てるうちに胸が締めつけられる思いがしました。もちろん、フラッシュがたかれる度に同じ高さで跳躍していて宙を歩いているかのように見える、そのマラーホフの技術のすごさにも舌を巻きますし、本当にすごい作品ですごいダンサーだと感嘆します。音もさせずに跳躍し着地するマラーホフだからこその作品ですよね(と思ったら、ABTのMETオープニング・ガラでコレーラが同作品を踊ったとか)。

でも、胸をしめつけられたのは、それ以上に、闇に隠された部分で、フラッシュで浮かび上がる部分のためにマラーホフがしている動きを思ってしまったのかもしれません。よく白鳥が水面下で懸命に水をかく姿とダンサーの日頃の厳しき鍛練と節制が引きあいに出されますが、それに近い感覚を覚えました。それに、他の日はフラッシュとタイミングが合わなかったような話も耳にしたので、今日の状態がマラーホフにとってもどれだけ嬉しいだろうか、というようなことまで考えていたかも。

そういうこともあって、すごく圧倒され目に焼き付いたマラーホフの姿。最後にトンと音を立てて地上に戻ってきたところの、なんとも嬉しそうな彼の表情も忘れられません。納得のいくパフォーマンスだったでしょうし、観客もそれに応えて大盛り上がり。


マラーホフからの素敵なギフト、たっぷり堪能した公演でした。満足。

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管理人:ゆう

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