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<バレエの巨星>プリセツカヤ&ルジマトフ 世紀のスターとインペリアル・ロシア・バレエ(2001/10/19)

新宿文化センター

第1部

「カルメン組曲」

振付:アルベルト・アロンソ/音楽:ジョルジュ・ビゼー、ロディオン・シチェドリン

カルメン:草刈民代
ドン・ホセ:イルギス・ガリムーリン
エスカミーリョ:ジャンベック・カイイール
隊長:ヴィタウタス・タランダ
宿命(牛):オレーシャ・バヤノワ
煙草工場の女たち:オリガ・チェルノブロフキナ、アリヤ・タニクパエワ

カルメンといえばプティ版が有名だが、ここではアロンソ版、プリセツカヤその人が企画して初演したカルメンを、草刈民代が演じた。華やかな人ねー。初心者がこんなこと言ったら怒られるかな?ちょっと体が固いというか、動きがスムーズじゃないような箇所があったような。

私の生まれた年に誕生したこのバレエは、プリセツカヤが演じるカルメンに徹底的にスポットが当たっているようだ。1時間弱の舞台の間、カルメンはほぼ出突っ張り。ロマンティックバレエや、第二部で上演された「海賊」などのような華麗なジャンプやフェッテはなく、プリマの顔や手の表情で演じる部分が多かったように思う。

片手を腰に当てて見得を切る独特のポーズを見るにつけ、プリセツカヤ本人の踊るカルメンを見られないことが残念でならない。(追記:後にビデオで見る機会があった。)草刈さんは華やかだけれど、プリセツカヤのカルメンではありえないから。パンフレットに記載されている、カルメンを演じる当時のプリセツカヤの写真。それは、ファム・ファタルそのもの。プリセツカヤのカルメンなら、さぞかし背筋がぞくぞくしただろうと思うのだ。そんな後悔ともいえないような無念さを味あわないためにも、これからもいろんなバレエを見続けられれば幸せだと思う。

ドン・ホセ役のガリムーリンのダンスもすばらしかった。きっとまた日本で彼の踊りを見る機会があるだろう。楽しみが増えた。

第2部

「牧神の午後」

振付:ヴァツラフ・ニジンスキー/音楽:クロード・ドビュッシー

ニンフ:マイヤ・プリセツカヤ
牧神:アレクセイ・ラトマンスキー
ニンフたち:ヴァレンチナ・フェチーソワ、ナタリア・チーシェンコワ、ナジェジュダ・ザハロワ

ここはもちろんニジンスキー版。プリセツカヤがニンフ役で登場するとあって、牧神よりもニンフに客席の注目が集まっていたようだ。プリセツカヤが登場すると、客席で一斉にオペラグラスや双眼鏡が目にあてられる。何を確認したいのだろうか。その表情?それとも年齢を示す証拠を探すのだろうか。彼女はもう何十年もの間、観客のそんな視線とも戦ってきたのかもしれない。もちろんそんなものは、旧ソ連下での制限された創作活動や厳しい監視の目に比べたら蚊のようなものなのかもしれないが。

牧神役のラトマンスキーの動きは「牧神」になりきっていて、思わず見ほれてしまうほど。半分人間、半分動物、という見た目だけじゃなく表情も「けだものっぽさ」があった。

70歳を過ぎたプリセツカヤがピンと背筋を伸ばして日本の舞台に立っているだけでも、それはすごいことなのだろうと思う。「牧神の午後」には華麗なジャンプもフェッテもアラベスクも登場しない。彼女のしなやかで凛とした身のこなしと表情に見ほれるのみ。もちろん、それだけで「ありがたい」ことなんだろう。悔いるべきは、その頂点の踊りを見られなかった自分自身であろう。

「愛の記憶〜タンゴ〜」

振付:アッラ・シガーロワ/ゲジミナス・タランダ/音楽:タンゴ「エル・チョクロ」他

ゲジミナス・タランダ、インペリアル・ロシア・バレエ

2001年初演の「愛の記憶」から"マルセイユ〜渚のレストラン〜"からの断章、という場面のみの上演。レコードをかけたようなホワイトノイズ入りのヨーロピアンタンゴが流れる(今回の音楽は全てテープ使用だった)のは、どうやら1920年代といった感じの酒場。タキシードや水平服の男達といかにも1920年代といった服に身を包んだ酒場の女たちが舞台にいる。

新作だけあって新しい(?)試みが多く、バレエとはこういうもの、という固定観念がある私はめんくらった。男性陣だけの、戦いをモチーフにしたダンスは華麗というよりただ荒々しかったし(しかも、バラバラで揃ってなかった・・・)、目の前で繰り広げられるダンスはやっぱりタンゴだった。

箸休めのような位置づけになってしまって、激しい戦いの場面を演じたダンサーたちは気の毒だったかな。カーテンコールでの、酒場の女たちのハスッパな挨拶は微笑みを誘ったよ。

「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/ヴァフタング・チャブキアーニ/音楽:リッカルド・ドリゴ

メドゥーラ:イリーナ・スルネワ
アリ:セルジャン・カウコフ

メドゥーラを演じるスルネワ、アリを演じるカウコフとも、高いジャンプで魅せていたし、くるくると続くフェッテもすばらしい。軸足が少しずれていたけど、「お祭り」って感じで盛り上げていました。

「ガウチョ」

振付:ニコライ・アンドロソフ/音楽:「太陽のマランボ」

ゲジミナス・タランダ、アルチョム・ミハイロフ、イリヤ・クズネツォフ

先日見たジプシーオーケストラの民族衣装に何となく通じるような、あるいはスペインの闘牛士を想像させるようなコスチュームで3人の男性ダンサーが登場。コミカルに客席をあおって、ノリノリのステージだった。

インペリアル・ロシア・バレエの芸術監督でもあるゲジミナス・タランダ、ミハイロフ、クズネツォフのダンスは民族色も豊かで、1つのショウとして観客をすっかり楽しませてくれた。

「イタリアン・カプリチオ」

振付:ユーリ・ペトゥホフ/音楽:ピョートル・チャイコフスキー

マイヤ・プリセツカヤ、インペリアル・ロシア・バレエ

何というか、宝塚でいったら「すみれのはーなぁ〜、咲ーく頃ぉ〜」みたいな、顔見せ的なものだった。第2部で登場したソリストたちが次々に現れてダンスを披露し、最後には名誉総裁のプリセツカヤがロングドレスにハイヒールという出で立ちで登場する。その立ち居振る舞いはため息がでるほどに何とも優雅ではあった。

第3部

「シェヘラザード」

振付:ミハイル・フォーキン/音楽:リムスキー=コルサコフ

ゾベイダ:ユリア・マハリナ
奴隷:ファルフ・ルジマトフ
シャリアール王:ゲジミナス・タランダ
シャーザーマン(王の弟):ユーリー・ヴィスクヴェンコ
宦官長:ヴィタウタス・タランダ
オダリスク:タチアナ・ゲンゲル、リュボフ・セルギエンコ、アナスタシア・ドリゴ

6時半の開演から既に2時間以上が経過している。途中で休憩があるといっても、なかなかしんどくなってきた。しかし、当日ここへ足を運んだ女性(年代はそうとう幅広そうだ)の大半のお目当てであると推測されるルジマトフは、ここからの登場となる。ルジマトフがこのシェヘラザードを一幕通して踊るのは日本では初だそうで、その点でも注目されたようだ。

シェヘラザードの舞台は、その名からわかる通りアラビアンナイト。ただし、シェヘラザードその人は出てこない。シャリアール王が女性不審になった原因の出来事がバレエになっている。きらびやかでエキゾチックな舞台装置と衣装。加えて、ゾベイダ王妃を演じるマハリナの手足の長く美しいこと!ルジマトフの演じる奴隷はもちろん野性味と色香があるのだが、マハリナの、シャリアール王に寵愛されるのも当然!といった美しさとエロティックさに釘付けになってしまった。そんな2人がからむ場面にドキドキしない人がいるのだろうか。ルジマトフの圧倒的な存在感にも全くひけをとらないマハリナに、思わずため息。

気になったのは、ここでもコール・ドの不揃いさ。手足が長いロシアのダンサーであるからして、よけいに合わないのが目立つ。群舞の不揃いさに意識がいってしまって、ルジマトフのフェッテに拍手し損ねてしまった。私だけでなく、会場全体が。技巧のすごさもそうなんだろうけど、その存在感と、美意識の高さに圧倒された、初ルジマトフだった。

カーテンコールはもちろん鳴りやまない。花束を持った女性がルジマトフに殺到して、いくつかの花束を受け取ったマハリナも苦笑していた様子。彼女はルジマトフと組むことも多いようなので、慣れっこなのでしょう。マハリナの舞台も、もっと見てみたいと感じた公演だった。

今回の公演はガラ公演だから仕方ないのだろうが、音楽が全部テープだったのはがっかり。いや、テープでもうまいこと調整してくれればよいのだが、どうも音響的に成功とは言い難いのでは・・・?などと、生意気にも思ってしまった。新宿文化センターの音響設備がナンボのもんかわからないけれど、やはり生オケに限るなぁと思った次第。バレエの楽しみの1/3は演奏だったりするからね、私の場合。

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管理人:ゆう

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